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「能動的学習者とその条件」(第2回フォーラムレポート2)

概要
  • 2017年4月30日に開催された第2回フォーラムJUDO3.0のゲストスピーカー、北島大器さま((株)ラーニング・イニシアティブ代表)の講演「能動的学習者とその条件」を伺った参加者(酒井)のレポートです。
  • 講演から個人的に学んだことについてのレポートです。ゲストスピーカーが実際にお話した内容とは異なりますのでご注意ください。
  • タイトル「「能動的学習者とその条件」北島大器さまの講演を伺って」
1. 課題:どんな人材を育成したいのか不明?!

柔道教育の大きな課題は、どんな人材を育てようとしたいのか、不明瞭な点にあるかもしれない。礼儀正しい人、誠実な人、努力する人、挑戦する人などなど、そもそも柔道教育はどんな人材を育てようとしているのだろうか?試合で勝てるような生徒を育てる、という短期目標以外に何が設定されているのだろうか?

昨今、柔道人口は急激に減少している。その要因はいろいろ挙げられているが、もしかして教育機関として「成果」がでてないから、社会から必要とされなくなり、生徒が集まらなくなっているかもしれない。しかし、そもそもどんな人材を育てようとしたいのか、その「成果」が定義されていないから、イメージ通りの人材を輩出して「成果」が出ているのか、どうやったら「成果」を出したらいいのか、分からない。こんな現状がないだろうか。

もちろんこの目指す人材像、教育の「成果」を定義することは非常に難しい。嘉納先生もまたこの目標設定の重要性と困難さを直面し、何十年も研究し「精力善用・自他共栄」という定義をつくった。それでも、もしどんな人材を育てるのか、その目標や成果を定義することができたら、次に、そのために何をしたらいいのか、具体的に検討することができる。

以上、前置きが長くなったが、では「これから柔道はどのような人材を育成したらいいのだろうか?」という問いに向かい合ったらどういう解をだしたらいいだろうか。

2. 「やりたいからやる」という人材

この問いに向かい合ったとき、とても参考になったのがゲストスピーカー北島さまのお話だ。人間の動機には以下のように段階があるという。

「やりたいからやる」
「言われたことに価値を見出してやる」
「自分なりに意味づけしてやる」
「言われたことに自分なりに折り合いをつけてやりこなす」
「言われたことしかやらない」
「言われてもやらない」

どの段階の動機で動く人を育成するのか?という視点である。つまり、あえて単純化すると「これから柔道はどのような人材を育成したらいいのだろうか?」という問いについて、以下の二択からどちからを選ばないといけない。

a)言われたことを忠実に実行する人材
b)自分がやりたいからやるという人材

どちらを目指すのか?一応、現在、以下のように言われている。

  • -「やりたいからこの仕事をやる」というように内発的動機で活動できる人材は、「言われたからやる」という人材より、成果を出しやすいと言われている。
  • -また、以前の大量消費大量生産の時代は、a)の「言われたことを忠実に実行する人材」が多数必要されていたが、社会が変わり、新しい価値創造が必要とされるいまの時代は、b)の「やりたいからやるという人材」が多数必要とされている。

改めて、「柔道教育はどのような人材を育成したらいいのだろうか?」という問いを考えるにあたり、どのような「動機」で動く人を育てるか、という視点を得たことが大きな学びであり、示唆となった。

生徒の自主性を大事にする教育がいいか、スパルタ教育がいいのか、という議論がよくされているが、どのような動機で動く人を育てるのか?という問いは、この2択を超える視点のような気がした。これからの指導者はどちらを選ぶのだろうか?

3. 柔道人口減少の原因?

もしかして、柔道は「言われたことを忠実に実行する人材」を育成している教育機関だと世の中から思われ、それが原因で人口減少しているという可能性はないだろうか。

青山学院大学マラソン部の原監督は、「なんでも「はい!」と返事する生徒は信じない」と話しているそうだ。考えてないからだ。

ふとサッカーのジーコ監督を思い出した。おぼろげな記憶だが、今から約15年前、ジーコ監督は、言われたことをやる選手ではなく、自分で考える選手の育成にとり組む、と話し、その方針の是非が話題になったような記憶がある。サッカーは少子化の中でも競技人口が増えているが、「自分がやりたいからやるという人材」育成にシフトしたから、社会から必要とされるようになったのだろうか。

4. とはいっても目の前の試合やテスト

とはいっても、目の前の試合、目の前のテストがある。「とにかく先生がいう通りやれ」と指導したほうがテストで高い点をとれたり、試合で勝ちやすいときがあるだろう。そして、実際にテストで高い点をとったり試合で勝てば、なんらかの成長があるのではないか。なので、北島さんに質問してみた。

ときには「先生のいうことをとにかくやれ」という指導が必要なのではないか。

その回答がいまでも心に残っている。

ケースバイケースです、とおっしゃりながら、「その人のその後の人生は長い。どんなに目の前のテストや課題で結果を出しても、「やりたいからやる」という動機で動く人材を育てることができなかったとき、その人のその後の人生はどうなるのだろうか。」

自主性を尊重する指導か、スパルタ教育か、そんな2択を超えて、生涯にわたり「やりたいからやる」という動機で動くことができる人材をどう育てたらいいか?そのために今何をしたらいいか?もし柔道が、指導者が具体的に話し合えるようになったら、柔道教育は進化する。そして「やりたいからやる」という内発的動機で動く人材を社会に数多く輩出するようになったら、柔道クラブに多くの生徒が集まるだろう。

言うは易し、行うは難しだが、兎にも角にも、まずは「柔道はどのような人材を育成したらいいのだろうか?」という問いに向かい合わないといけない。そして、その問いに向かい合ったとき、大きな視座を得るのが「動機」に着目することだった。この「動機」の話はデドワード・L・デシの自己決定理論に基づくらしい。もっと調べようと思った。

酒井重義

#柔道レガシー





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