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少年柔道クラブがオンライン稽古をやってみた!標茶柔道スポーツ少年団の挑戦

北海道の標茶柔道スポーツ少年団は、新型コロナウイルス感染症の防止対策として稽古の自粛が続いている中、2020年4月7日から、ビデオ通話(zoom)を用いたオンライントレーニングを始められました。そこで、代表の吉田悟志先生、指導員の武山千明先生にその経緯や内容についてお伺いさせていただきます。

目次

1.トレーニングを開始するまで
2.オンライントレーニングを実施した感想
3.オンライントレーニングの課題と利点
4.参加した生徒や家族の感想
5.オンライントレーニングの可能性
6.これからの柔道への危機感
7.オンライントレーニングを検討されている方へ
8.オンライントレーニングの様子(動画)

酒井 吉田先生、武山先生、本日はよろしくお願いいたします。まずオンライントレーニングとはどのようなものでしょうか。

吉田 生徒が自宅からパソコンやスマホを通じてウエブ上の会議室に入ります。そこで、一緒に身体を動かしています。zoomというビデオ会議システムを使っています。

1.トレーニングを開始するまで

酒井 どのようなきっかけがあって、このような取り組みを始めたのでしょうか。

吉田 標茶柔道スポーツ少年団は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年2月20日から練習を中止しました。3月は「いま我慢していたら4月に練習ができる」と思っていたのですが、4月も練習を自粛することになりました。待っていたら5月や6月に練習を再開できるかもしれませんが、生徒のみんなにそれまで会えないのは寂しい。そこで「何かないか?」と思っていたところ、ビデオ会議システムzoomを使ったオンラインイベントを知り、やってみようと思ったのです。

酒井 どのようなことが課題でしたか?

吉田 はじめてのことなので、分からないことが多かったのですが、一番心配したのは、どれだけのご家庭が参加できるか、ということでした。生徒は自宅からパソコンやスマホから参加することになりますが、小学生の生徒の多くは保護者のスマホやパソコンから参加することになります。自宅で、このオンライントレーニングに使えるスマホやパソコンなどの端末があるのか、ネットに接続できる環境なのか、保護者が自宅にいる時間で、かつ都合がいい時間は何時か、機械の操作が苦手なときはどうしたらいいか、など様々なことが課題でした。

酒井 どのようにしたのでしょうか。

吉田 自由参加にして、まずやってみることにしました。うちは保護者と指導者が参加しているラインで情報共有をしているのですが、4月4日土曜日だったと思います。そのラインに、3日後、4月7日火曜日にオンライントレーニングやります。参加したい方は参加ください、という趣旨のことを連絡しました。

酒井 生徒や保護者の皆さんにとっては突然でびっくりしたと思うのですが、武山先生、クラブの代表の吉田先生がそのような提案をされたとき、どのようにお感じになりましたか。

武山 私は普段から仕事でビデオ会議システム使っているので、オンライントレーニングに違和感はありませんでした。それに、吉田は、保護者へのラインでかなり詳細に説明していました。集まることができずに残念であること、そして、この状況がこの先も続きそうなので、オンラインで集まりたいということ、ビデオ会議システムzoomとはどういうものか、写真をつけた解説があり、アプリの入れ方や操作の仕方なども説明していました。

酒井 吉田先生、そのとき保護者のみなさまの反応はいかがだったのでしょうか。

吉田 ライン上のやり取りなので、なんというか、特に反応はありませんでした。自由参加で、事前の申し込みも必要なく、「その時間、参加できる方はご参加ください」ということにしていたので、「参加します」という事前の連絡もほとんどなく、オンライントレーニングを開始するまで、どれぐらいの生徒が参加するのか、分からない状況でした。

2.オンライントレーニングを実施した感想

酒井 ご案内しても無反応だったんですね。当日までドキドキだったと思いますが、当日はいかがだったのでしょうか?

吉田 当日は17名も生徒が参加してくれました。数人は参加してくれるだろうと思っていたのですが、これほど多くの生徒が参加するとは思わず、びっくりしました。

酒井 パソコンやスマホの画面上に生徒が17人も映っているわけですね。はじめてのオンライントレーニング、どうだったのでしょうか。

吉田 50分だったのですが、あっという間に終わりました。私が自宅のパソコンの前で動きを見せて、生徒に指示をする、というかたちで進めたのですが、実際の道場と異なり、指導しながらだと、画面上の一人ひとりの生徒の表情や様子はよく見えません。生徒たちは盛り上がっているように見えましたが、詳しくは分かりませんでした。ただ、終わってから、何人かの保護者から、「とてもよかった」という声をいただき、「次もやろう」ということになりました。

酒井 いまはどれぐらいの頻度でやっているのでしょうか。

吉田 平日は月曜日から木曜日まで、毎日19時45分から20時30分まで45分間、休日は土曜日9時30分から11時00分まで1時間半です。

酒井 週5回もやっているんですか。すごいです。どのようなトレーニングになるのでしょうか。

吉田 自宅で一人でできるトレーニングが中心となります。体幹トレーニング、片足立ち、ジャンプスクワットなど、一応、メニューをつくっているので、お渡しします(左図)。

酒井 トレーニングのほか、何かやっていることはありますか。

吉田 生徒の1分間スピーチをはじめてみました。柔道教育は「形・乱取り・講義・問答」といいますが、指導者が一方的に話してしまうことが多いので、この機会にと思い、やってみました。生徒にとっても初めてなので、恥ずかしがってなかなか話せない生徒もいましたが、いろいろ話してくれる生徒もいて、「この子、こういうことを考えていたんだ」といろいろ発見がありました。回を重ねていくごとに生徒はもっと話せるようになっていくと思うので、これからが楽しみです。

3.オンライントレーニングの課題と利点

酒井 実際にやってみて、今はどのあたりに課題を感じていますか。

吉田 そうですね。オンラインですし、自宅で一人で参加する生徒がほとんどなので、組み合うようなトレーニングはできません。乱取りも二人での打ち込みもできない。一人打ち込みも、小学校低学年の生徒には難しいですし。また、うちは小学生から中学生が団員なのですが、どの学年に合わせて稽古をしたらいいか、簡単すぎると上の学年には物足りないですし、難しいと下の学年ができない。もし時間があれば年齢やレベル別にクラスを分けて行うことも考えられますが、現状は難しい。ただ、生徒の中には自主的に練習をしていて、「自分でトレーニングしているのでオンライントレーニングには参加しません」という生徒もいます。それはそれでいいと思います。

酒井 実際にやってみて、よかった点はどのあたりでしょうか。

吉田 やはり絆を確かめ合うことができたことです。あとは保護者から「家でゴロゴロしているうちの子に『たまには運動したら』といっても言うことを聞かない。このオンライントレーニングのおかげでうちの子が運動していてありがたい」という感想もいただきました。

酒井 大人でも自主的に運動することができる人は多くないですよね。休校になって運動不足の子どもさんが多いと思いますが、多くの人にとって「何時にトレーニングがある、参加しなくちゃならない」というのがあるから運動できると思うので、外出できないときの子ども達の運動不足の解消としてオンライントレーニングはとても価値があると思います。他にオンライントーレニングをやってよかったこと、ありますでしょうか。

吉田 何回もやっていると、オンライントレーニングのクオリティが向上していくというか、上達を感じられることがうれしいです。指導する私も、生徒もだんだん慣れてきて、用意したメニューが早く終わり、時間が余るようになってきたんです。なので「この余った時間に次はどんなトレーニングを入れようかな」と考えており、そういうことも楽しいです。

4.参加した生徒や家族の感想

酒井 ありがとうございます。それでは、武山先生から見て、オンライントレーニングをやってみた感想はいかがででしょうか。

武山 そうですね。2月下旬から標茶柔道スポーツ少年団としての活動ができていなかったので、少年団として活動した、お互いに顔を合わせた、というのは大きかったと感じています。子ども達が大人になったとき、「100年に一度の疫病といわれる中でも、自分たちは稽古を続けたんだ」と、いい思い出になってくれたらと思っています。
はじめてオンライントレーニングで子ども達と顔を合わせたとき、とてもうれしかったのですが、翌日の朝、なんというか、少し悲しい気分になりました。会っていなかったら悲しい気分にもならなかったと思うのですが、オンライン上でも会ったら、「もっと会いたい」と思います。でも会えない。オンライン上で会ったからこそ、会いたい人に会えない現実を感じました。

酒井 生徒のみなさんも、休校中で、他の生徒に会えない状況だと思うので、友達に会えずにさみしい思いをされている生徒も多いのでしょうね。

武山 オンライントレーニングの開始前、何十分も前に、真っ先にビデオ会議室に入ってくる小学生の生徒がいるんです。彼は遠方から通ってくる生徒なのですが、北海道の中でも田舎にいて、同じ学年に同級生が一人しかいないような環境にいます。だから、彼にとって標茶柔道スポーツ少年団の仲間が本当に大事な仲間だと思うのですが、オンライントレーニングの最中、本当にうれしそうにしてました。彼の笑顔が強く印象に残っています。遠く離れていても会える、文明というかインターネットは素晴らしいと思いましたね。

酒井 1か月以上も友達と会えず、自宅で過ごしていたわけですよね。自宅待機の期間、大人はいろいろやることがあって、適当に息抜きができると思いますが、その子がそれほど素敵な笑顔を見せたってことは、精神的な負担が本当に大きかったということかもしれませんね。大人の想像以上に、子ども達は友達に会えずに過ごすことがつらいかもしれない。

武山 オンラインでも生徒の様子がいろいろ見えます。ある女の子は普段の稽古で一生懸命に練習している生徒なんですが、このオンライントレーニングでも、画面上で汗が見えるくらい一生懸命トレーニングしているんです。オンラインでも生徒の一生懸命さが伝わってきました。あと、身体が大きい子がいるのですが、お母さんに聞いたら、家では寝っ転がっていて全然動かないそうです。でもこのオンライントレーニングがあるから運動しはじめたそうです。お母さんは「運動するきっかけを与えてくれて本当によかった」と話してました。

5.オンライントレーニングの可能性

酒井 子ども達の様子を伺うと、オンライントレーニングの効果の大きさを実感します。吉田先生、オンライントレーニングの可能性について、どのように考えていますか。

吉田 今度、私たちは、イギリスのロンドンの柔道クラブの生徒と合同でオンライントレーニングをする予定です。NPO法人judo3.0がコーディネートしているのですが、先日、ロンドンの柔道の先生とビデオ会議で話をして、「一緒にやってみよう」となりました。ロンドンも新型コロナウイルスの感染拡大防止のためロックダウン、外出禁止となっていて、柔道クラブはトレーニングができない状態になっています。ロンドンの柔道の先生も、自宅で過ごしている生徒にオンラインで何か機会を提供したいと考えており、一緒にやろうとなりました。

酒井 オンライントレーニングには様々な限界がありますが、他方、リアルにはない利点があります。それが、世界中どこにいても、会うことができるということ。標茶柔道スポーツ少年団が普段おこなっているオンライントレーニングに、世界中の生徒が参加できますし、標茶柔道スポーツ少年団の生徒が、世界各地の柔道クラブのオンライントレーニングに参加することもできます。世界中に友達ができますね。NPO法人judo3.0は、新型コロナウイルス拡大防止のため自粛が続く期間、オンラインの可能性を最大限開拓して、子ども達が世界中に友達100人いる、という環境を目指して活動しています。いまは、4月から毎週日曜日、海外の柔道クラブの先生と日本の柔道クラブの先生が話し合う機会を作っています。ロンドンの生徒と標茶の生徒との対話、私たちもとても楽しみにしています。

吉田 実際にやってみないとわかりませんが、生徒も楽しみにしています。

6.これからの柔道への危機感

酒井 それにしても、オンライントレーニングを実施するには様々な困難があったと思うのですが、この新型コロナウイルスの騒動が終息するのを待たずに、あえてオンライントレーニングを開始した理由は何かあるのでしょうか。

吉田 危機感です。新型コロナウイルスはいつ終息するか分かりません。「待っていたら何とかなる」といっても、子どもが子どもでいる期間は限られています。いまの中学一年生は、4月なので、ちょうど部活を選ぶ時期です。例えば、あくまで仮の話ですが、今後、陸上の短距離走のように人との接触が少ない競技は早く再開、大会も予定どおり開催され、他方、柔道のように室内で人との接触が多い競技は、再開が遅くなるかもしれません。もしそのようになったら、生徒だったらどちらを選ぶでしょうか。柔道をやりたいと思っていても、稽古も大会もできるのが何時になるか分からないとなったら、陸上を選ぶのではないでしょうか。だから「ただ待っているだけではだめだ。今できることをしたほうがいい」と思ったのです。もちろんこのオンライントレーニングにどれほどの効果があるのかは分かりませんが。

7.オンライントレーニングを検討されている方へ

酒井 「これからオンライントレーニングを始めたい」という方に何かアドバイスはないでしょうか。

吉田 自分たちもまだ試行錯誤しながらやっている最中ですが、「思ったよりは意外に簡単だった」という印象です。もちろん様々な課題があり、「きちんと準備をして環境を整備してからはじめよう」とすると、なかなか始めることはできなかったと思います。「まずやってみよう、やりながら改善していこう」というスタイルだったからできたと思います。
また、私自身が標茶柔道スポーツ少年団の代表であったため、団体としての意思決定を早くできましたが、それは、それ以前に、私自身が、ビデオ会議システムzoomを使ってオンラインのイベントに参加して、オンラインイベントがどういうものか、イメージできていたことが大きかったと思います。

酒井 NPO法人judo3.0は3月から毎週金曜日の夜、オンライン上で、柔道をテーマにして、どなたでも参加できる交流会を行っています。カフェバーのような空間をテーマに、様々なゲストがお越しくださり、また様々な地域からの参加者と語り合っているので、ぜひこの機会を活用してほしいですね。それでは、最後に一言お願いいたします。

吉田 オンライントレーニング、なんというか、楽しいです。圧倒的に楽しい。やっぱりオンラインでも生徒に会えるのが本当にうれしいです。それにこれからロンドの生徒とも会えるし、先日は、愛知の柔道の先生とビデオ通話で話し、近々、愛知の生徒が私たちのオンライントレーニングに参加してくださる方向で協議しています。私たちも生徒を連れて他のクラブの稽古に参加してみたいですし、ロンドンだけでなく、いろんな国の柔道クラブのトレーニングにも参加してみたいと思っています。先がどうなるか分かりませんが、今できることをやっていきたいと思っています。

酒井 吉田先生、武山先生、貴重なご経験をシェアしてくださり、本当にありがとうございました。

 

8.オンライントレーニングの様子(動画)



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