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大学生が目がキラキラとしている柔道の先生と会ってみて-第7回フォーラムJUDO3.0レポート-

地方大学生のjudo3.0横浜フォーラム参加記

中村太記

みなさん、こんにちは。和歌山で柔道をしております中村太記と申します。2019年11月23日(土)、NPO法人judo3.0が主催する第7回フォーラムJUDO3.0 -ワクワクする柔道の未来- に参加したのですが、事務局からフォーラムのレポートをとのお話をいただきまして、私なりのフォーラムの捉え方やフォーラムに参加して感じたことをまとめさせていただきたいと思います。

フォーラム参加のきっかけ(自己紹介を兼ねて)

私は小学4年生の時に地元の道場で柔道を始め、そこから中学・高校・大学と柔道を続けています。最初は楽しいと思っていた柔道でしたが、だんだん勝つために練習をするようになっていきました。そして、高校時代には大きなけがを経験し、柔道は高校で辞めようと思っていました。しかし、大学に入ってから、高校では楽しめなかった柔道をもう一度楽しみたいという思いが強くなりました。そして、大学で柔道部には入りました。

しかし、勝敗のために柔道をすることを辞めた状態で練習をしていると何のために柔道をしているのかわからなくなる時期がありました。柔道部で活動をしながら、何か自分で柔道の価値を見つけたいと思い続けていました。そんな折、大学2年生の7月に大学に和歌山で柔道キャンプをしていたポーランドの柔道チームが来てくださり、そこからjudo3.0とかかわりを持たせていただきました。昨年(2018年)の9月に東京で行われたフォーラムから毎回参加させていただいています。

フォーラムへの参加動機はいたってシンプルで3つあります。

①柔道を通して面白い取り組みをされている大人に出会える
②全国の柔道をされている方々とつながることができる
③自分が柔道を通して何をすべきなのかが見えてくる

という理由です。judo3.0のイベントにはできるだけ参加し、多くのことを学ばせていただき、大学での勉強や今後の将来に活かせることができるといいなと思いつつ、いつも参加させていただいています。

今回のフォーラムに参加して得たもの

私は、今回のフォーラムに参加して得たものとしては2つあるのではないかと思います。

① 新たな柔道の視点
② 自分が柔道を通して何をしたいのかの再発見

です。

新たな柔道の視点

「なぜ柔道は人気を失いつつあるか?~競技柔道が見失ったもの~」有山篤利先生

1つ目は新たな柔道の視点を獲得できたことです。主に第1部のことを中心にまとめさせていただきます。第1部の有山篤利先生の「なぜ柔道は人気を失いつつあるか?~競技柔道が見失ったもの~」という講義は衝撃的でした。

1つ目の課題である「なぜ柔道人気は失いつつあるのか」について、今まで現在の柔道が人気のない状況をただ今の状況としか見たことがありませんでした。しかし、有山先生は時代の流れから現在の柔道人気が下火になっている理由を教えてくださいました。また、日本代表がなぜオリンピックなどの国際大会で金メダルを求められるのかを時代の流れから学ぶことができました。

「成果」だけが求められる時代から成果につながる「プロセス」(満足感・達成感・やりがいなど)が求められる時代になってきている、というのはまさにその通りであり、この時代の流れに柔道が合わなくなってしまっているというのは確かにその通りだと思いました。

金メダルを取るために柔道をするというのは成果を求めてする柔道であり、この「成果」を求めてする柔道と「プロセス」が充実している柔道を両方追求し、バランスよく柔道をしていくことが今、柔道をしている人たちに求められることではないかと感じました。

もちろん「成果」を求めてする柔道は素晴らしいものがあります。小学校では特に結果を残したことはありませんが、中学では本当にたくさん練習をして、強くなっているのが試合の結果として顕著に表れてきました。嬉しかったと同時にもっと強くなろうという思いが強くなりました。また、結果が出る過程では多くの人たちの支えがあり、人に感謝をするということを学ぶことができたのも事実です。そして、この経験があったからこそ、今の自分があるというのも事実です。

しかし、「成果」を求めるだけではなく、「プロセス」を大切にすることでより人間としても柔道を通して成長できるのではないかと思いました。私は、先に述べた通り、大きなケガをして、大会での勝利という「成果」を求めることをやめたとき、何のために柔道をしているのかわからなくなる時期がありましたが、例えば、海外で柔道をして日本の恵まれた環境を知るとか、昇段するために柔道の練習をし技を磨くなど、試合で勝つ以外の「プロセス」に関して何かしらの目標を立てて、追及することでより人間として成長できるのではないかと考えました。

2つ目の課題「社会人になるとなぜ柔道を辞めるのか」については、剣道と比較して柔道というものを捉えられるようになったのが今回の学びだと思います。

確かに私の同級生を見ても、社会人になると柔道から離れてしまっていたり、大学に進学しても柔道から離れてしまったりする同級生がいます。今回、有山先生は柔道と剣道では、「スリルや興奮の感じ方」「ストレス発散についての比較」「稽古や修行についての比較」から比較し、柔道を続ける人は①自分が強い②指導者としての道があるという二つの理由があるとおっしゃっていました。また、柔道の楽しさは「勝つ・勝たせる」「仲間とつながる」の二つですが、剣道の楽しさはこの二つに加えて、「わざを究める」ということがあるとおっしゃっていました。

「柔道を続ける人」については、周りの柔道を続けられている方々を見て、確かにそうだと思うと同時に僕自身はどちらにも適合しないかも知れないと思いました。それこそ、1つ目の課題とつながる側面もありますが、僕は柔道が強いわけでもなく、指導者をしているというわけではありません。地元の道場で子どもたちと柔道をさせていただいていますが、指導をするというよりは一緒に楽しんで柔道をしている側面が強いと感じています。

しかし、柔道をすることで得られるものに気づいたからこそ、大学で柔道部に入って続けられているのではないかと思います。これは剣道の楽しさと似ている側面もあると思いますが、試合で勝つことにはあまり意味を感じず、技を増やしたり、磨いたりすることに意義を感じたり、柔道でつながりができることが楽しくて日々稽古をしております。

5人の挑戦者が描く「ワクワクする柔道の未来」

第2部では、5名の先生方がお話してくださりました。

1人目は福井県あわら市・ゲンキッズステーションasoviva!の長田康秀先生。
「柔道の先生が柔道を教えない運動教室を始めた!少子化時代の柔道の先生の使命を再考する」という題でお話ししてくださりました。子どもの体力低下が叫ばれる昨今、体力低下には様々な原因があると思いますが、その中で遊ぶ環境がなくなってきているのは大きな問題であると思います。現代を生きる子どもたちがASOVIVA!で運動学習を行うことで、本来人間が持っている運動機能が呼び覚まされます。また、自分の運動能力の進歩状況を「アニマル測定」という独自の評価基準をつくることで「見える化」しているのは子どもたちのモチベーション維持にすごく良いのではないかと思いました。

2人目は愛知県安城市・杉山道場の佐藤守先生。
「大人が柔道を始める理由~日本マスターズ柔道大会と生涯柔道~」という題でお話してくださりました。佐藤先生は40歳を超えてから、娘さんが柔道を始めるのと同時に柔道を始められ、そこから初段を取得され、さらに指導者になられて今に至るという経歴には驚きました。柔道を心の底から楽しまれ、向上心を常に持たれている姿は私自身、見習わせていただかなければならないと強く感じました。

3人目は神奈川県横浜市・土曜柔道会の長谷川正仁先生。
「モロッコ世界マスターズ大会に参加して」という題でお話してくださりました。「試合に出るだけではなく、世界マスターズに出て、海外の人たちと交流して、子どもたちに柔道を教えるのが楽しみなんだ。」とおっしゃっている長谷川先生の話をお聞きし、日本で柔道をするだけではなく、海外に出て、つながりを広げるとともに、まだ見たことがない柔道の世界を見てみたいと強く感じました。

4人目は島根県立大学の西村健一先生。
「日本初!発達凸凹と柔道クラブの実態調査から見えてきた柔道の可能性」という題でお話してくださりました。西村先生は、発達障害の可能性がある子どもさんが柔道クラブにどれぐらいいるかについて調査されており、その実態についてのお話が印象深かったです。柔道教室での発達障害の子どもたちへの指導法の確立はしなければならないことであるし、私自身も考えてみたいと思いました。

5人目は鹿児島県鹿屋市の内村香菜先生。
「鹿児島で柔道療育がはじまった!福祉を担う柔道をつくる」という題でお話してくださりました。「柔道療育」について、私は興味を持っていたため、以前、同じく柔道療育を提供している大阪府堺市の放課後等デイサービス「みらいキッズ塾」を見学し、運営する浦井先生にお話を伺わせていただいたことがありました。そのため、内村先生がどのような柔道療育をなされているのかは非常に興味がありました。「子どもたち一人一人の現状から、どのようにしていけば子どもたちの身体が良い状態になっていくのか、を熱心に考えられ、熱い思いを持って柔道療育をなされている」ということを内村先生のお話をお聞きさせていただく中で強く感じました。

分科会

第3部の分科会では、講演をしてくださった佐藤先生や内村先生、長田先生とお話をさせていただきました。佐藤先生からは柔道を心の底から楽しむことの大切さを教えていただいたのではないかと思います。内村先生からは柔道療育についてさらに詳しいお話を聞かせていただきました。長田先生はASOVIVA!についてもう一度丁寧にお話してくださりました。

様々な取り組みをされている先生方の目がキラキラとしているのが本当に印象的でしたし、自分も先生方のように何かキラキラとした目で他の方々にお伝えさせていただけるようになりたいなと思いました。

最後に、judo3.0の酒井さんが「これからの柔道教育のワクワクのポイント」という題でお話をしてくださりました。
これまでのjudo3.0の国際交流の成果、そしてこれからの展望などについてお話してくださりました。例えば、北海道の物産展が東京で開催され、北海道と東京がつながるように、judo3.0のフォーラムをフランス・パリなどで開催して、日本の地域の先生とヨーロッパの地域の柔道の先生がつながる機会をつくるというお話は、これからのjudo3.0の発展や日本の地域の道場の大きな進歩の第一歩となる可能性が秘められており、私自身も非常に楽しみです。

自分が柔道を通して何をしたいのかの再発見

今回のフォーラムに参加して、改めて私が柔道を通してどんなことをしていきたいのかを再発見しました。

1つ目が「柔道を通した国際交流を海外でしたい」ということです。

長谷川先生のモロッコでのお話をお聞きして、世界にはまだ見たことのない広い世界があり、井の中の蛙ではいけないと実感しました。海外に行かなければわからない日本の良さであったり、柔道に対する見方というものがあるのではないかと思います。大学生活は残り1年半ほどしかありませんが、この1年半の間で海外に行って、海外で柔道を通した国際交流をしたいという思いがまた強くなりました。

2つ目が「発達障害や知的障害を抱えた子どもへの柔道指導について深めたい」と改めて思ったことです。

現在、私は大学で体育科教育を専攻していますが、専攻理由は「障害の抱えた子どもでもできる柔道指導を研究し、卒業論文に書きたい」という思いからでした。また、内村先生からは柔道療育のお話をお聞きし、西村先生からは発達障害児と柔道との関係やこれからについてお聞きし、長田先生からは運動が不器用な子どもの成長についてのお話をお聞きしました。

障害があるからできないではなく、障害があってもできるという環境を構築することはこれからの社会ではさらに求められるのではないかと思います。だからこそ、柔道療育をされている先生方の現場を見学させていただいたり、障害者柔道についての知見をもっとこれから深めていくと同時に、発達障害など障害を抱えた子どもへの柔道指導の手立てを自分自身も見つけていきたいと強く思いました。

最後に

私は現在大学3年生で、来年の夏には大学柔道部を引退してしまいます。しかし、柔道人生はまだまだこれからだと思っています。柔道に秘められた可能性は無限大であり、その可能性を引き出せるかどうかは私たち自身にかかっているのではないかと思っています。これから、将来のキャリアを考えつつ、自分が大学を卒業してからはどのように柔道とかかわっていくのかを考えるとともに、これからも引き続きjudo3.0の活動に参加させていただき、自分の柔道に対する知見を深め、自分であれば何ができるのかを考え続け、実践し続けていけるようになりたいと思います。

中村太記

※NPO法人judo3.0事務局です。以下、中村さまのレポートに掲載いただいたゲストの皆さまの当日の講演のムービーです。本当に素敵なお話でした。よろしければご覧ください。

フォーラム当日の講演ムービー

「なぜ柔道は人気を失いつつあるか?~競技柔道が見失ったもの~」有山篤利氏(兵庫教育大学)

※有山先生のお話は約6分後からはじまります。早送りください。

「柔道の先生が柔道を教えない運動教室をはじめた!少子化時代の柔道の先生の使命を再考する」長田 康秀氏(福井県あわらし市 ゲンキキッズステーションasoviva!)

「大人が柔道をはじめる理由~日本マスターズ柔道大会と生涯柔道~」佐藤 守氏(愛知県安城市 杉山道場)

「モロッコ世界マスターズ柔道大会に参加して」長谷川正仁氏(神奈川県横浜市 土曜柔道会)

「日本初!発達凸凹と柔道クラブの実態調査から見えてきた柔道の可能性」西村 健一氏(島根県立大学)

「鹿児島で柔道療育がはじまった!福祉を担う柔道をつくる」内村 香菜氏(鹿児島県鹿屋市 放課後等デイサービス笑光)


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