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埼玉の坂戸ろう学園でデフ柔道日本代表・佐藤正樹選手が講演&柔道体験会を開催

2024年6月3日(月)、埼玉県立特別支援学校坂戸ろう学園(坂戸市)にて、デフリンピック日本代表・佐藤正樹選手(ケイアイスター不動産/ケイアイチャレンジドアスリートチーム)による講演と柔道体験会が行われました。以下、その様子や運営メンバーの想いなどを伺いましたのでご覧ください(文責:3.0マガジン編集部・酒井)

当日は、埼玉県女子柔道振興委員会(川原久乃氏 小野寺智美氏)、志茂柔道クラブ(堀資雄氏、五十嵐茜氏)、順天堂大学柔道部の学生(佐藤七海氏 寺戸将大氏)が運営協力し、坂戸ろう学園の中等部と高等部の生徒30名強が参加、

最初に佐藤選手から、生い立ちや柔道との出会い、柔道の魅力、デフリンピックにアスリートして参加する理由などが語られ、

その後、体育館に移動して、生徒の皆様が受身や礼法を習ったり、柔道衣の頑丈さを体験するため綱引きをしてみたり、佐藤選手の披露する柔道の技を見たり、柔道の技で運営スタッフを投げてみたりなどの柔道体験が行われました。

柔道の受身の説明

柔道衣の頑丈さを体験する柔道衣での綱引き

佐藤正樹選手による柔道の技の披露

生徒の皆様が柔道の技で実際に運営スタッフを投げてみる体験

柔道衣の試着体験(埼玉県女子柔道振興委員会が用意)

運営メンバーの感想

佐藤正樹氏(ケイアイスター不動産/ケイアイチャレンジドアスリートチーム)

講演後に質疑応答では、苦労しながらも乗り越え方についての質問が多く、きっと自分自身が変わりたい、前向きに生きていきたい、という気持ちになってくれたと思い、私自身の経験が伝わったように感じて嬉しかったです。実際の体験会では、生徒たちが楽しそうに取り組んでくれたこと、柔道着を実際に触れて興味を持ってくれたことも嬉しかったです。そして健聴のボランティアの方々がろう者に寄り添って楽しく取り組んでくれたことはとても感慨深くなりました。

川原久乃氏(埼玉県女子柔道振興委員会)

2025年11月15日から26日の期間、東京でデフリンピックが開催されます。オリンピックは平和を守り、パラリンピックは勇気を生み、デフリンピックは夢を育むと言われます。今回、坂戸ろう学園の中学・高校生を対象に佐藤正樹選手の柔道教室が開催されましたが、講演では、生徒の皆様から特に就職についての質問が多く出され、柔道の体験会では、投げ技体験がとても盛り上がりました。生徒の皆様の中には「柔道を始めたらすぐに強くなる。将来デフリンピックに出場できるかもしれない」という生徒もいらっしゃいました。埼玉県女子柔道振興委員会は埼玉で柔道を始める皆様を応援しておりますので、今回をきっかけにデフリンピックや柔道への関心が広がり、生徒の皆様がそれぞれの夢を育むことに貢献することができたらうれしいです。

小野寺智美氏(埼玉県女子柔道振興委員会)

今回の活動にボランティアとして参加したきっかけは、2025年の日本で開催される、デフリンピックに向けて活動している、佐藤正樹選手の応援がしたいという思いと、ろう学校の子供たちとふれあいたいという思いからです。今回の活動に参加し佐藤選手の講演を通して、はっとした事は、パラリンピックとデフリンピックの違いでした。聴覚障碍者が出場するのはデフリンピックであり、世界中で通じる国際手話を用いてコミュニケーションを取ると言うことを知って、デフリンピックの魅力をこれまで以上に感じました。パラリンピックの認知度に比べ、デフリンピックの認知度は低いようです。誰もがスポーツを通して交流できるように、デフスポーツを広め、国内や世界に挑戦する機会ができる事は、未来を支える子供たちにとって、とても大切な事だと思います。デフ柔道家の佐藤正樹選手の活動は、子どもたちにとって、夢を実現するための勇気を持つきっかけになったのではないでしょうか?!講演を聞いている子供たちの目はとても真剣で、ずっと佐藤選手の言葉(手話)に釘付けでした。夢を諦めず、できる方法を考える。佐藤選手ならではの「ラッキー法」、「ポジティブな捉え方」、ネガティブな現状も「けれども、ラッキー」で雑音が聞こえないので集中できる、という考え方、子どもたちだけでなく、私自身も共感できました。身に起きる問題を自分のチャンスに変える考え方を身に付けて、子どもたちが持っている力を存分に発揮して、佐藤選手のように夢をかなえてほしいと思いました。柔道体験会では、佐藤選手考案の、柔道着の丈夫さを伝える柔道着綱引き、身を守るための受け身、柔道着を着て人を投げる楽しさと礼法の意味を実際に体験してもらいました。どれも楽しそうにしていましたが、人を投げた時が皆、一同に盛り上がり、とても楽しそうでした。重複障害のある生徒が人を投げた時に、子どもたち一同が応援し歓声を上げていました。そして、解散した後の片づけをしている私に高校生男子が一人ずつそばに寄ってきて「ありがとうございました」と声をかけてくれたのです。柔道を通して、この活動に参加して良かったと思う場面でした。2025年の日本で開催されるデフリンピックの成功と、デフ柔道、デフスポーツ選手を応援致します。まずは私も手話を使って、会話ができるようになる事が夢です。時間をかけて実現したいです。ありがとうございました。

堀資雄氏(志茂柔道クラブ)

私がdeaf(海外ではDeaf。デフは人種であるというプライドの表れ)に柔道を指導し始めたのは24年前です。その頃は空手、テコンドー、柔道のアスリートが設立した『日本ろう者武道連合』がやっと立上ったばかりでした。2019年、全日本ろうあ連盟主導で『日本ろう者柔道協会』が設立しました。全日本柔道連盟に視覚障がい・ろう者柔道連携部会ができ、やっと選手たちが競技だけに集中出来る環境が整い、世界大会で2013年以来の金メダルを獲得するに至りました。現在、全国のろう学校に柔道部はありません。全国的に柔道部が激減している昨今の情勢を鑑みるに今後も柔道部が設立される可能性は限りなく低いと思われます。特にろう学校では柔道を見たこともないという子供の方が多いのは自明の理です。ろう児に柔道を体験してもらう、佐藤正樹選手がどの様に柔道を続けてきたのかという本講演会は大変意義深いものであると思います。部活の地域移行は現状全くスムーズに進んではいませんが、この講演をきっかけに地域の柔道クラブ等で一人でも柔道を始めてくれるろう児が出てきてくれれば幸甚の極みであります。

五十嵐茜氏(志茂柔道クラブ)

講演では、佐藤選手が生い立ちやこれまでの経験の話をしている時の生徒たちの目はとても輝いており、自分たちの将来を想像しながらワクワクしているような、体を前のめりにして聞き入ってる生徒が多くいました。体験では生徒たちが初めて柔道着を触っただけで「すげー!かっけー!」「全然破けない!」と手話で盛り上がっており、その柔道着を使った綱引きはさらに賑やかになり何度も何度も引っ張りあっては「頑丈すぎて手が痛くなるね!」と笑顔が絶えずとても楽しそうでした。投げ技体験では実際に投げるとなると”怖い”というのが表情に見られましたが、実際に組んでみれば、そこはさすがdeafです。今回初めて柔道に触れた生徒たちですが、数回、佐藤選手の見本や説明を見ただけで視覚情報の取り入れ方が素晴らしく、身体の使い方も上手で思った以上にスムーズに投げることが出来ました。この講演・体験会を機に、柔道をやってみたい!もっとデフスポーツを知りたい!…と興味関心を持ってもらい、柔道をはじめデフスポーツの普及、今後のデフ選手の発掘育成へと繋がっていってくれたら嬉しい限りです。

佐藤七海氏(順天堂大学柔道部)

私は、今回初めてデフ柔道に携わらせていただいたので、運営側でありながらも基本的なことを1から学ばせていただきました。体験が始まると、子どもたちは初めて着る柔道着や、投げられている時の大きな音にとても怖がっているように思えました。しかし、時間が経つにつれて笑顔で楽しみながら取り組んでいる姿が見え、とても嬉しく思ったのと同時に、柔道の大きな可能性を感じました。今回、運営側として参加させていただいたことで、講演を行うまでに必要な準備や流れを学ぶこともできました。今後も、積極的に今回のような講演会のお手伝いをさせていただき、少しでも多くの方に柔道の魅力を伝えていきたいと思います。

寺戸将大氏(順天堂大学柔道部)

本日の講演会では貴重な経験をさせて頂きました。講話を聞いたり、多くの方と交流をすることで聴覚障害やデフ柔道について学びを深めることをができました。佐藤選手や学生と実際に組合い、投げを受けることで身を持って相手の緊張や楽しむ感情を感じ、交流を通して改めて柔道の良さを見つけました。

※本イベントの様子は坂戸ろう学園のウエブサイト「中学部高等部 デフ柔道 講演&柔道体験会」にも掲載されております。こちらもぜひご覧ください。

※この取り組みは有志とjudo3.0が2023年夏から始めた「デフリンピック東京2025を盛り上げたい!」プロジェクトから生まれました。

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