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ベトナムとカンボジアの柔道クラブを訪問して

木村有孝

2019年5月7日(火)~15日(水)までの8泊9日で、カンボジアでは4ケ所、ベトナムでは3ケ所の道場を訪問してきました。現地で柔道を通じた国際交流をしたいとお考えの皆様に少しでもお役に立てればと思い、この場をお借りして報告させて頂きます。なお、カンボジアの概要については、津田塾大学のMaja Sori Doval先生が投稿した記事「カンボジアの柔道と文化~アンコールワットの道場、孤児院、地雷~」を参照して下さい。

私は、小中学生時代をマレーシアで過ごし、日本人学校と現地の道場で柔道を覚えました。多民族国家マレーシアは、マレー人、中国人、インド人等が共存しており、道場も色んな人種が一緒に稽古をしており、日々が国際交流でした。現在は、50年の歴史ある川崎市の柿生青少年柔道会にて、指導員をしており、今までにフィンランド、韓国、ベトナムからの指導員を招き、子どもたちにも国際交流の楽しさを伝えています。また、稽古前後に海外の道場訪問について報告をしたり、絵本やグループワークを通じて、精力善用・自他共栄等を一緒に考える場づくりも行っています。

カンボジア

カンボジアには、学生時代の友人に会うために過去3回訪問したことがありましたが、柔道の情報は全くない中、NPO法人judo3.0のフォーラムで出会った小林先生とのご縁で、2018年、友好65周年記念式典で柔道披露をさせて頂いたこと等で人脈をつくることができました。

①JJMC(Joyful Judo Mission Club)

首都プノンペンから約30km離れたカンダール州Tonie Bati村にある道場は、日本の留学経験もある韓国人宣教師Hong Min Seo先生(以下、ホンミン先生)が小学生から大人までの幅広い層を一人で指導しています。この村に行くためには、大渋滞するプノンペン市内、途中舗装がされていない道路に揺られて、カンボジアの庶民の足であるトゥクトゥクで約1時間半かかり、ホンミン先生に紹介頂いたドライバーでも往復30米ドルかかります。

村には、井戸水やトイレもない家もある他、少し離れた場所にポルポトを最高指導者としたクメールルージュの政権による収容所跡地や大量虐殺のKilling Fieldや納骨堂があります。そんな村でホンミン先生は、子どもたちが健全に育つよう、日々相談にのったり、レクレーション活動等を行っており、柔道を通じた心身強化にも励んでいます。

2018年9月に訪問した時は、畳がなく、コンクリートの庭の上に1cm程度のマットを敷いて、毎日稽古をしていました。正直、私自身、他日本人の先生と投げ技を披露する際、受け身をしっかり取っても痛みを感じました。最近は、閉鎖した近隣道場から譲り受けた古い畳を敷き、以前より安全な環境に整備されつつあります。

子どもたちは勉学、大人は仕事にも一生懸命になった分、忙しい生活を送っており、週末に稽古をしているとのことでした。稽古の内容は、ウォーミングアップ後、打ち込み、投げ込み等を中心に行っていますが、習い始めて1年後には、複数の技を連続で掛けて投げることができるまでに成長しています。私は、今回で2回目の訪問になりますが、身長158cm・体重58kgの小さな私でもコツをつかめば、背負い投げ等で大きな相手を力を使わずに投げることができることを披露させて頂きました。皆さん、見て驚き、実際に練習して体感すると、喜んでくれます。ホンミン先生が日本語ができるため、日本語からクメール語に通訳して頂きました。この道場には、柔道着も十分な数がないため、中にはTシャツで稽古をする子どももいます。2回共、柔道着の寄付をさせて頂きましたが、今後も継続的な支援が必要だと実感しました。

②警察道場

プノンペン市街地のオリンピックスタジアムに道場があるため、近くにホテルを予約すればトゥクトゥクで片道約2米ドルで行くことができます。若い女性カンボジア人指導員が中心となって、毎日、夕方稽古をしています。稽古の内容は、ウォーミングアップ後、筋トレと打ち込み等を交互に行っているのが特徴です。実際の試合を想定し、疲れた中でも柔道の技が正確にできることを目標にしているようです。私からは背負い投げを、小林先生からは体落としと大外刈りのポイントを披露後、皆さんが打ち込みをする中で、個別指導をさせて頂きました。なお、一部の指導員が英語ができるため、英語からクメール語に通訳して頂きました。

③カンボジア柔道連盟、ユース代表チームの道場

プノンペン市街地のオリンピックスタジアムに連盟の事務所と道場があるため、近くにホテルを予約すればトゥクトゥクで片道約2米ドルで行くことができます。カンボジアのユース代表は、朝と夕方の2回稽古をしており、元カンボジア代表等の複数名で構成される指導員が配置されています。稽古の内容は、日々、指導員が事前打合せを行い、ウォーミングアップ後、打ち込み、技の指導等を中心に行っています。今後、更なるレベルアップを求め、青年海外協力隊の派遣待ちです(つまり、派遣が決定すれば、その方との連携の上での訪問が必要です)。

さて、私は、今回で2回目の訪問になります。実は、私は学生時代、国際協力の専門職になることを夢見ており、日本福祉大学で元国連難民高等弁務官の冨田輝司教授から学びました。以前より恩師が国連を通じて柔道着の寄付活動を行っていたこと、カンボジアでの国際協力活動はユネスコ職人のパートナーを通じて行っていたこと、残りの柔道着を届けて欲しいという話は聞いていたんです。前回の帰国直後に恩師が亡くなり、写真等の遺品整理をしていた際、恩師が過去に柔道連盟の事務局長に柔道着を寄付してる写真を発見しました。そこで再度、事務局長に連絡を取り、私が代わりに届ける約束をしたんです。今回は、背負い投げや寝技のコツを紹介した後、贈呈式を行い、前回以上に大変喜んで頂きました。なお、一部の指導員が英語ができるため、英語からクメール語に通訳して頂きました。

④Ankor YAWARA Dojo

アンコール遺跡があるシエムレアプ州にある国際日本文化学園(IJCI)の中に道場があり、近くにホテルを予約すればトゥクトゥクで片道約2米ドルで行くことができます。若い男性カンボジア人指導員が中心となって、土曜日と日曜日の17時半~20時に稽古をしています。稽古の内容は、音楽がかかる中、ウォーミングアップを約1時間しっかり行い、その後、打ち込み、技の指導等を中心に行っています。

過去2回は、指導員のSophy Chhan先生(以下、ソフィー先生)との連絡が十分取れなかったのですが、今回は3度目の正直でやっと訪問が実現しました。ソフィー先生は、昨年末、中郡柔道研修大会で審判デビューし、その際、道場の子どもたちがお世話になったんです。今回は、背負い投げ、大外刈り、支えつり込み足のポイントを披露後、皆さんが打ち込みをする中で、個別指導をさせて頂きました。また、カンボジア風にアレンジされたアクロバティックな演武も見せて頂きました。

日本語を学んで7年目の学生さんが通訳をしてくれた他、数名は日本語で簡単なコミュニケーションをすることができました。学園の理事長である鬼一二三先生が季節毎に日本の文化を紹介することで、子どもたちは日本への関心も高いです。現在は、コンクリートの上に畳を毎回敷いて稽古をしていますが、今後、学校の敷地内に道場が建設されるようです。

ベトナム

ベトナムの柔道家、Pham Thanh Huu先生(以下、ヒウ先生)から友達申請を頂き、2018年の武道始めと花見練成会に招待し、日本の伝統を楽しんで頂きました。今回は、ヒウ先生と連絡を取って訪問し、ホーチミン市柔道連盟の皆様に大変お世話になりました。なお、カンボジアと違い、日本人が気軽に利用できるトゥクトゥクがなく、またタクシー料金も高額です。但し、連盟に予め連絡を取れば、ホテルの手配やバイクの2人乗り等での移動は協力してくれるようです。

⑤軍隊スタジアムの道場

ホーチミン市内にある軍隊スタジアムには、伝統的な武術ボビナムの他複数の武道を習うことができる施設とメニューが用意されています。ヒウ先生を通じて紹介頂いた元ベトナム代表のDang Cuong先生(以下、トゥリス先生)が中心となって週5日間程、指導している道場です。稽古の内容は、ウォーミングアップ後、打ち込み、乱取り、筋トレ、ランニング等を中心に行っています。寝技は苦手なのでほとんど稽古ができていないようです。

今回は、背負い投げのコツ等ポイントを披露後、皆さんが打ち込みをする中で、個別指導をさせて頂きました。トゥリス先生は、英語と韓国語に精通したガイドでもあるので、英語からベトナム語に通訳して頂きました。なお、軍隊施設なため、トゥリス先生の付き添いがないと、外国人は入ることができません。

⑥DONG NAI道場

ホーチミン市の隣にあるドンナイ省の巨大なスポーツ施設内にあり、元ベトナム代表のTran Son Thai先生が中心となって毎日指導している道場です。ホーチミン市街地からバイクで1時間以上かかります。中高校生12名が授業の合間に1日2回通ってきます。

稽古の内容は、ウォーミングアップ後、打ち込み、寝技、乱取り等を中心に行っています。1~3年でしっかりとした投げ込みができるレベルに成長しています。今回は、背負い投げと寝技のコツ等ポイントを披露後、個別指導をさせて頂きました。トゥリス先生が同行してくれたので、英語からベトナム語に通訳して頂きました。

⑦TAN BINH地区の道場

ホーチミン市の隣にあるスポーツ施設内にあり、元ベトナム代表のNguyen Duy先生、Tran Son Thai先生が中心となって毎日18時半~21時まで指導している道場です。小学生から大人まで150名以上が在籍し、ホーチミン市内の大会等で優勝或いは準優勝等の好成績を収めています。稽古の内容は、ウォーミングアップ後、打ち込み、寝技、乱取り等を中心に行っています。今回は、背負い投げと寝技のポイントを披露後、個別指導をさせて頂きました。小学低学年くらいの子どもが多く、小さな力で大きな相手を担いだり、動かす様子に拍手喝采でした。あいにく、ヒウ先生は不在でしたが、同僚のLoi Tien Duc先生が日本語からベトナム語に通訳して頂きました。なお、①~⑦の情報は、英語等でのやりとりであり、もしかしたら正確ではないものもあるかもしれません。ご了承下さい。

まとめ

私の指導でも皆さん熱心に聞いてくれたり、記念撮影の行列になる等、大変楽しい時間を過ごすことができました。今回は、私自身が今一度、国際交流を楽しみたいという想いに加え、今後、カンボジアとベトナムに行く方への情報提供となればと思い、7ケ所の視察をしてきました。

①事前準備の必要性

私は訪問先の方と事前に十分な打合せの上で訪問することが必要だと思います。訪問する目的、宿泊先や移動手段の確保、通訳の依頼等がお互いに確認できていると安心ですし、先方に迷惑を掛けないことと思います。道場によって望まれることも様々であり、基本的な技の披露、試合で勝つためのポイント指導、同世代の柔道交流等があります。また現地の歴史文化の事前学習、最小限の現地語の習得も必要だと思います。知っていると喜ばれます。

②柔道着等の寄付

両国共に柔道着は、不足しており、日本や韓国からの寄付、地元で購入できる空手着での代用で何とか稽古ができている状態です。最も必要としているサイズ等を確認の上、可能な限り、寄付できる柔道着を持参するといいと思います。また今後、柔道着の発送支援活動を検討中です。その際、皆様、ご協力の程よろしくお願いします。

③相手国の尊重

柔道も海外に行くと日本との共通点も多々あれば、違いもあります。両国は、アクロバティックな演武をすることが生徒を集める手段のひとつです。私はマレーシアで柔道を覚えたので違和感を感じないのですが、違いを指摘するのではなく、受け止める姿勢も必要ではないかと思います。私自身は約束の時間前に現地入りして、雰囲気を楽しむようにしています。現地では、アジアンタイムと言って時間にルーズな面がある一方で、私が来ることを想定して予めアップを終えておく道場もありました。

最後になりますが、NPO法人judo3.0の皆様のお陰で、私自身、再度、海外で柔道を楽しむことができることができています。この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。

木村有孝

子どものころマレーシアで柔道を学ぶ。柿生青少年柔道会(神奈川県)指導員。社会福祉士・介護福祉士。

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