道場を建てる理由。柔道で集った人と楽しい時間を過ごしていきたい。
2019年4月21日、兵庫県丹波篠山市に、cafe and judo studio “TOUYA” がオープンしました。このカフェ併設の柔道場を建てたのは、ロンドンオリンピック銀メダリストの杉本美香選手を輩出した兵庫県の土曜柔道会(当時は伊丹土曜柔道教室)の代表である佐々木洋賢先生です。
公共の体育館や道場を借りて稽古をするクラブがほとんどの中、なぜわざわざ道場を建てたのでしょうか、どのような柔道の可能性を見ていたのでしょうか。3.0マガジン編集部(担当:酒井重義)が佐々木先生にインタビューさせていただきました。
編集部:佐々木先生、オープン直後のお忙しい中、インタビューさせていただき、ありがとうざいます。柔道の指導はいつ頃から始められたのでしょうか。
佐々木先生:私は、25歳ぐらいのころから兵庫県にある伊丹土曜柔道教室で自身の稽古と指導員をさせて頂きました。そして 16 年前に創設者である森下高明先生から伊丹土曜柔道教室の代表を引継ぎました。
また 12年前に兵庫県三田市で三田ゆりのき教室を立ち上げ、以来、伊丹市と三田市で二つの柔道教室(7 年前に二つの教室を土曜柔道会として登録)の代表兼指導員をしています。
柔道で集った人たちともっと楽しく過ごしていきたい
【土曜柔道会のクリスマス会の様子】
編集部:道場を建てようと思った理由を教えていただけないでしょうか。
佐々木先生:伊丹でも三田でも、公共の施設を借りてやっていますが、当然ながら、利用できる時間が決まっており、決められた時間以外に使うことはできません。「もっと自由に柔道をしたい」。それは稽古だけではなく、「柔道で集った人たちともっと楽しく過ごしていきたい」。そういう想いがあって、15年ぐらい前から「道場があったら」と思っていました。
編集部:実際に探していたのでしょうか。
佐々木先生:当時は、伊丹や三田で道場が立てられそうな土地をちょっと探してみたり、図面を書いてみたりしたのですが、漠然と思っていただけでした。
バリ島の仙石道場の衝撃
【インドネシア・バリ島に仙石常雄先生が建築した仙石道場】
編集部:何かきっかけがあったのでしょうか。
佐々木先生:2017年の夏、インドネシアのバリ島の仙石道場にいったことでした。NPO法人judo3.0にサポートしていただき、保護者向けの説明会などを開催して希望者を募り、希望した生徒と指導者、総勢25名でバリ島にいきました。
そこで見たのは、仙石先生が建てられた武道館のような大道場でした。道場だけではなく、道場の隣に仙石先生のご自宅があり、30名近くが宿泊できる合宿施設がある。
仙石先生は、警視庁の柔道師範や講道館の指導員を務められ、定年退職してからバリ島に移住して道場を建築されたのですが、そのきっかけは、20代のころ、インドネシアで柔道の指導をされ、そのとき、お金がなくて柔道ができない子どもたちがたくさんいることに心を打たれ、それならば将来自分が柔道を無料で教えてやろう、と思ったというお話を伺いました。
私は、仙石先生が20代のころにもった夢を持ち続け、定年退職後にバリ島に道場を建てたこと、夢を道場というカタチにされたことを間近で見て、衝撃を受けたのです。自分が漠然と「道場があったら」と思っていたことを、実際に実現している仙石先生の姿をみたことで、改めて、自分の中で「道場を建てることはやっぱりいい」と再確認することができました。
道場を建てるまで
【建築中の”TOUYA”の様子】
編集部:2017年の夏のバリ島訪問をきっかけに本格的に動き出したわけですね。本格的に動き出してから2年も関わらず道場ができましたが、順調だったのでしょうか。
佐々木先生:最初は土地が見つからなくて本当に苦労しました。たまたまご縁があって、今の場所がみつかりました。また、道場を建てるには資金が必要となりますがここ数年、本業の建築事務所の仕事が順調であった事と商工会議所の仲介で日本政策金融公庫からの融資を受けることでクリアしました。
また、土地の購入からお世話になった陶芸家 MI さんには、設計施工をして下さった方や外構、ブランディングなど其々の専門家を紹介して頂き、お陰様で想像以上に素敵な建物になりました。
編集部:どのようなところにこだわりがあったのでしょうか。
佐々木先生:私たちは、できるだけ工業製品を使わない、自然素材でつくられた空間を望んでいました。なんというか、呼吸が楽にできるような建物のイメージです。そういうイメージを共有できる大工さんにお会いするまで時間がかかりましたが、ご縁に恵まれたと思っています。
カフェをつくる
【”TOUYA”のcafeの様子】
編集部:道場にはカフェがついていらっしゃいますね。
佐々木先生:私は、道場が柔道に限らず、いろんな人に集まる場所になってほしいと思っています。道場にたくさんの人が関わるようになると、そこから柔道に関心を持ってくれる人がでてくると思うからです。
編集部:柔道は室内でやっているので、普通の人はテレビ以外で柔道を目にするほとんどないと思うのですが、カフェにいったら、柔道している子どもの姿が見えた、というのは新鮮な体験ですね。
佐々木先生:あと、稽古が終わったら仲間とカフェで飲む、みたいな楽しいことができたらと思っています。
より多くの人が柔道を知るきっかけになってほしい
【”TOUYA”での稽古の様子】
編集部:カフェ以外に道場をどのように活用していこうとお考えですか。
佐々木先生:ヨガ教室や周りの豊かな自然環境を生かした外遊びなどもしていきたいと思っていますし、海外の少年柔道チームに来ていただいて、みんなで国際柔道合宿ができたらと思っています。
編集部:そこまで柔道にかける想いはどのあたりにあるのでしょうか。
佐々木先生:なんでしょうか。。柔道をやることによって自分自身が得られたものが大きかったからかもしれません。中学生のころからずっとやってきました。そのときはとても人気がありましたが、いつの間にかマイナースポーツになってしまいました。
これからは、勝つための柔道だけでなく、いろんな人が関わって、みんなで楽しむことができる柔道も必要なのではないかと思っています。それをするためにもっと自由にできる道場が必要だったのです。
編集部:佐々木先生、お忙しい中、インタビューにご対応いただき、本当にありがとうございました。
佐々木 洋賢
土曜柔道会代表。
cafe & judo studio “TOUYA”
cafe&judo studio TOUYAは兵庫県篠山市にあります。詳細は以下をご参照ください。
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