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【2022年方針】「共に学ぶ」を2300名から1万人へ

judo3.0は今年で8年目となります。以前は一部のfacebook利用者にしか知られていなかった活動ですが、最近はありがたいことに「judo3.0って何?」「どんな活動をしているの?」と聞いていただくことが増えました。この2年弱のコロナ禍で新しいことに挑戦して、judo3.0の活動も変化しています。したがって、新年を迎えるにあたり、judo3.0はこれからどのような活動をしていくのか、を記していきたいと思います。特に「judo3.0の活動に関わってみたい」と思ってくださっている皆様に、目指しているところ、活動の全体像、直面している課題などをお伝えできたらと思っています。

1.理想とアプローチ
2.スクール運営
3.メンバー

1.理想とアプローチ

具体的な活動に触れる前に、judo3.0が何を目指しているか、を簡単に整理しておきたいと思います。

目指していること

judo3.0は「人類の共栄」を目指して「新しい公教育を創造する」を使命に掲げています。

良き「社会」を築くためには常に時代に即した優れた「教育」システムを作り続けることが必要です。judo3.0は、柔道に次世代の公教育を作り出すポテンシャルがあると考え、その可能性をカタチにするために活動しています。

ここでいう「新しい教育」の方向を大別とすると、①インクルーシブ、②グローバル、③キャリアの三つの方向になります。

①インクルーシブとは、より多様な人々に柔道が届くようにしていくこと。現在の柔道は、定型発達の青少年の男女を主な対象としていますが、それ以外の人々、障害があるなどの非定型発達の子供、中高年の男女などにもっと届くようにすることです。

②グローバルとは、グローバル化して地球上の多様な人々と共に生きる社会になっていることに対応した教育を作っていくことです。国際柔道交流などがその一つです。

③キャリアとは、①②を含めてとなりますが、道場の稽古で育んだ力を道場「外」で活かすことができる教育です。稽古を一生懸命に頑張って柔道が強くなったら、道場の外でも社会人としても成功することができる、そのような教育をカタチにするためにはどのようにしたらいいのか、これからはどのような力が必要なのか、柔道を通じてどのようにして育むのか、そのためにどのような体制が必要なのかなどを考え、教育環境をデザインしていくことです。

またここでいう「公教育」は誰一人取り残されることなく教育を受けることができる仕組みであり、「新しい公教育」の「新しい公」とは、政府や行政のみが「公共」を担うのではなく、社会の一人一人が「公共」を担う「新しい公共」を意味しています。「既存の学校ではなく、世界中の柔道関係者一人一人が協力して新しい学校を作ってみませんか」「誰一人取り残さないよう、お金がないから教育を受けられない、という状況を避け、みんなで協力して低コストで質の高い教育を作ろう」というものです。子供だけでなく大人の教育も含んでいます。

アプローチ

上記の理想を目指して、子供たちの国際柔道交流の支援や、柔道教育についてのフォーラムや発達障害と柔道指導のワークショップなどを開催してきましたが、そのイメージは「プラットフォーム」、それぞれの現場でグローバル・インクルーシブ・キャリアとしての柔道教育が広がっていくことをサポートをする中間支援組織です。例えば、子供たちの国際柔道交流が進まないのはそれをサポートする組織がないからであり、もしそれをサポートする機関があれば、それぞれの地域の柔道少年少女が異国に行って柔道をすることができるようになると考えています。

つまり、judo3.0が柔道クラブを運営するのではなく、日本各地、そして世界各地にある柔道クラブを上記の観点からサポートするプラットフォームがあったら、地球上のそれぞれの現場で行われている柔道教育がさらに素晴らしいものになるのではない、それは次世代の公教育と言えるものまでに進化できるのではないか、という着想です。

いわば現場の柔道教育を補完しようとする活動ですが、例えば、国際柔道交流については、「日本に生徒を連れて行ったとき、自分たちを受け入れて練習させてくれるクラブがどこにあるか分からない」という海外の指導者、「海外の生徒に来てもらえたらうれしいが、日本語が通じないから受け入れが難しい」という日本の指導者の双方をサポートすることで訪日が実現します。

コロナ禍の活動から分かった二つのこと

2020年3月からコロナ禍となり、これまで行ってきた活動ができなくなりましたが、「オンラインの柔道の世界を豊かに」というテーマでビデオ会議を積極的に活用してきました。2021年は、主にオンラインの授業やセッションを112回開催、先生やゲスト182名に登壇いただき、合計2366名の皆さまに参加いただいています。また、講義などを動画で配信することを開始し、2021年は動画78本を配信しました。

学ぶ機会には、①道場やオンラインクラスなどで他人と時間を共有しながら学ぶ機会(共に学ぶ)、②本や動画などを通じて一人で学ぶ機会(一人で学ぶ)があると思います。どちらもITの活用で拡充していると思いますが、judo3.0は、特に、ビデオ会議を活用して、講演会、勉強会、交流会など様々な形で①の「共に学ぶ」機会を作ってきました。その中で二つのことを実感しています。

一つは「共に学ぶ」機会はオンラインによって飛躍的に増大したことについてです。リアルの場合、特定の場所に集まらなければ「共に学ぶ」ことができませんが、ビデオ会議などのオンラインの場合、どの地域にいる誰とでも「共に学ぶ」ことができます。

誰もが知っているオンライン教育の特性ですが、私たちは、この2年弱、オンライン上の機会を作り続け、そこに参加してくださる人々の様子を間近で見てきて、この価値のすさまじさとポテンシャルを実感しています。

オンラインでなければ接することができなかった柔道の先生の素晴らしい活動に触れて感動したり、日本、スペイン、ギリシアの3か国から参加した柔道部の中高生がビデオ会議でたどたどしい英語を使いながらコミュニケーションをとり、共に学びながら成長していく姿に驚いたりしましたが、このインパクトをどのように表現したらいいのか分かりません。

適切な例えが思い浮かびませんが、例えば、教室の幅が10メートル、地球の外周は4万キロメールと考えると、「共に学ぶ」ことができる範囲は400万倍になっているし、学校に500人、地球上に70億人いると考えると、1400万倍になっています。あくまで例えにすぎませんが、オンラインで共に学ぶ教育のポテンシャルは広大で、現在はわずかしかカタチにすることができていない。しかし、音声通話、ビデオ通話、3D仮想空間での通話など、ITの進歩によって少しづつカタチになっていく、ということを実感することができました。

もう一つは、デジタルはリアルにつながる、ということです。

「授業はビデオ会議より対面がいい」という意見もありますが、いずれにせよオンライン教育は進んでいきます。ビデオ会議システムや3Dの仮想空間などを通じて、地球上のあらゆる人々と「共に学ぶ」ことが広がっていったときに何が起きるのか。

この2年弱の取り組みから分かったことは、オンラインで会えばリアルでも会いたくなり、オンラインで知ればリアルで体験したくなるということでした。仮想空間で世界各地の友人と共に学べば、共に学んだ異国の友人のところに遊びに行って柔道をしたくなるし、ビデオ会議でインクルーシブな柔道に取り組む指導者のかっこよさに触れたら、自分もインクルーシブな柔道を実施してみたくなります。

オンラインの教育が広がることでリアルの教育が減少するのではなく、逆に、リアルの教育の価値が再認識され、そして、再構築され、「共に学んだ」仲間や先生と実際に会うこと、「現場」にいって学ぶこと、「旅」や「冒険」など、リアルでしか味わえない教育機会がより価値を増していく。柔道は、世界に200か国以上に5000万人のコミュニティを有し、オンラインを通じてつながってみたい相手がすでに世界中にいるうえ、1対1で身体接触をしながら深いコミュニケーションをとることができるので、オンラインでもリアルでも大きなポテンシャルに満ちていると思います。

これからの方針:2300名超から1万人へ

このようなコロナ禍で得た気づきを活かすと、オンラインを積極的に活用して「共に学ぶ」機会を広げ、そのオンラインの学びからリアルの学びにシームレスにつなげていくということが大切ということが分かります。

2021年は、がむしゃらにオンラインを活用して、のべ2300名強の人々に「共に学ぶ」機会を提供しましたが、オンラインを活用した柔道教育のポテンシャルのごくわずかしかカタチにすることができていません。具体的な活動の内容は後述するとして、2022年は「共に学ぶ機会」を、リアル・オンライン合わせて、1万人を提供することを目標として活動していきます。

もちろん、具体的に何をしていくか、どんな価値を社会に提供していくかが大事で、数字はその活動の一側面を表しているにすぎません。ただ、有志とともに活動をしていく中で、自分たちがどれだけ前に進んできたのか分からなくなることがあります。そこで、様々な指標のうち、いまは参加者数に注目しています。例えば、2300人、1万人、5万人と参加者数を増やすことができたら、それは優れた教育機会を作ることができている証でもあり(よくない教育には人は集まらない)、理想に近づいていることを実感することができます。

2. スクール運営

スクール

前述したとおり、「人類の共栄」のため「新しい公教育を創造する」ことを使命とし、それぞれの現場の柔道教育をサポートするプラットフォームを運営していますが、今のところ、このプラットフォームを「スクール」を読んでいます。現場の柔道教育を補完する「スクール」であり、キャンパスを持たず、世界を学び場とする「スクール」です。

judo3.0のスクール運営は以下の7つの部門に整理されます。

  1. 国内・大人(国内の大人を対象とした研修等)
  2. 発達凸凹柔道(国内の大人を対象とし、発達障害と柔道をテーマにした研修等)
  3. 国内・子供(国内の青少年を対象とした研修等)
  4. 国際・大人(海外の大人と日本の大人を対象とした研修等)
  5. 国際・子供(海外の青少年と日本の青少年を対象とした研修等)
  6. 教材開発
  7. 柔道部

1~5までが前述した①「共に学ぶ」機会、6は本や動画を通じて「一人で学ぶ」機会となります。

昨年の実績

昨年の実績は前述しましたが(授業等112回・ゲスト182名・参加者2366名・動画配信78本)、その部門別の内訳は以下の通りです。

2021年授業数参加者数先生数活動例
①国内・大人②発達凸凹柔道851781122
3.0オンラインカフェ・発達が気になる子が輝く柔道サミット・柔道研修フォーラム
②国内・子供22726Univ. Judo Day
③国際・大人2032519国際インクルーシブセミナー・国際ローカル指導者勉強会
④国際・子供523315オンライン合同トレーニング
合計1122366182

以下、一つづつ見ていきたいと思います。

1.国内・大人

国内の大人、約4万2000人を対象とした活動です(2021年現在、指導者は約2万人、社会人は約2万2000人が全日本柔道連盟に登録されています)。

国内の大人を対象とした研修や勉強会などは、2016年に千葉で第1回フォーラムJUDO3.0を開催して以来、各地で開催してきましたが、コロナ禍になってからは以下の三つのタイプの活動を行っています。

A)3.0オンラインカフェ
B)テーマ別プロジェクト
C)指導者講習を兼ねた研修

A) 3.0オンラインカフェ

毎週金曜日の夜、及び不定期で開催している、どなたでも無料でご参加いただけるオンライン上の勉強会&交流会です。2021年3月から開催しており、2022年12月まで104回、開催しています。ゲストが講義をしてくださる回、特定のテーマでの勉強会、フリートークの回などがあります。また、2022年1月からは可能な範囲でゲストの講義の動画配信を実施しています。

2022年は50回開催する予定です。多様なゲストにお越しいただけるか否かが大きなポイントとなります。

B)テーマ別プロジェクト

特定のテーマに関心がある有志が集い、定期的に勉強会やイベントを行っています。2021年は「幼児への柔道の指導法」「柔道の形」「発達障害と柔道スポーツ」「高齢者と柔道」などで勉強会を開催しました。

このような勉強会があることで同じ興味関心を有する人々がつながり、勉強会にとどまらず、次のアクションにつながることがあります。例えば、「発達障害と柔道」をテーマにした勉強会は2016年から行っていましたが、その後、指導ノウハウの体系化したワークショップの開催や書籍の出版につながりました。

昨年から「柔道あそび」と「高齢者と柔道」をテーマとした勉強会が開催されており、2022年も勉強会を年4回程度開催する予定です。

また「高齢者と柔道」をテーマにした有志のグループは、学ぶだけにとどまらず、高齢者向けの柔道プログラムの開発に取り組んでおり、2022年3月には東京で体験会を開催する予定です。

2022年は、これらのプロジェクトをサポートするほか、他のテーマのプロジェクトが立ち上がることを支援していきます。

C)指導者講習を兼ねた研修

主に柔道の指導者を対象とした研修イベントです。地域の柔道協会さまとの共催や協力をいただいて開催するケースと、柔道協会さまの主催する研修に講師として参加するケースなどがあります。

昨年は、いくつかの柔道協会様にご協力いただき、様々なテーマのセッションが集まった第1回柔道研修フォーラム(11セッション、250名参加)や発達が気になる子が輝く柔道サミット(16名登壇、50名参加)などをオンライン上で開催しました。

2022年は、第2回目の柔道研修フォーラムの開催のほか、発達障害、部活の地域移行など、特定のテーマに力を入れた研修会を企画したいと思いますが、それぞれの地域の柔道協会さまのニーズをお伺いして、どのような研修であればjudo3.0が貢献できるのか、一つ一つ検討していきたいと思います。

2. 発達凸凹柔道

文部科学省の調査によると、国内には推定60万人の発達が気になる子がいるといわれていますが、彼ら彼女らが輝くようなインクルーシブな柔道環境を作っていく活動です。上記の「1.国内・大人」部門のテーマ別プロジェクトですが、活動が広がって関係者が増え、また「3. 国内・青少年」部門の活動も含まれているため、ここに一つの部門としてあげています。

2016年からフォーラムのテーマの一つして勉強会などをスタート、2018年から指導ノウハウを体系化したワークショップを各地で開催、2020年には書籍「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」を出版、2021年には上記を電子書籍化しました。2024年までに、国内3000の柔道クラブで発達が気になる子が受け入れられ、輝いている状態を目指して活動しています。

これまでは1日がかりのワークショップを各地で開催することで指導者や保護者にノウハウを提供していますが、コロナ禍で開催ができない状態でした。

A)オンライン上での段階的な学習コースの開始

発達が気になる子が輝く柔道の指導法について、対象者のニーズに合わせて、概要を数時間程度で学ぶ入門コースと、2か月程度の定期的な演習などを通じて本格的に学ぶ中級コースをスタートさせます。これに応じて教材も開発していきます。また、これまであまり接点のなかった保護者に対しても情報発信をしていくことを模索していきます。

B)凸凹の子供たちへの柔道体験イベントの開催

2021年下期に、一般社団法人ALIVEの若手ビジネスリーダーの皆様からコンサルティングをいただき、指導者へのノウハウ提供にとどまらず、まだ柔道を体験したことがない発達が気になる子供たちに対して、柔道体験を提供するイベントを企画しています。とくに、放課後等デイサービス等を利用する子供たちが柔道を体験して、近くの柔道クラブに入会するような、福祉の領域と地域のスポーツの領域の架け橋をすることができたらと考えています。

上記は、いずれもこのテーマに関心がある各地の指導者らが集まり、話し合うことによって前に進んでいます。このプロジェクトに参加するメンバーを常に募集しています。

3. 国内・子供

国内の子供(青少年)、約7万8000人を対象とした活動です(2021年3月時点、全日本柔道連盟には、未就学児約1000名、小学生約2万6000人、中学生2万4000人、高校生1万7000人、大学生9000人が登録されています)。

コロナ禍以前は、国内と海外の青少年の国際柔道交流(5.国際・青少年)に最も力を入れており、国内の青少年のみを対象とした活動はそれほど多くありません。柔道クラブへの出張講座や高校や大学の授業でのゲスト講演、高校生と大人が対話する第6回フォーラムJUDO3.0(大阪)などの活動がありました。もっとも、リアルの活動は、講師の移動や場所の確保などが必要となるため限界があります。

コロナ禍になってからはオンラインを活用して試験的な取り組みを行ってきました。例えば、2020年に「親子で参加!嘉納治五郎先生のオンライン紙芝居!」「こどもの日は北海道、福井、長崎に行こう!オンライン出稽古!」などのオンラインイベントの開催、休校期間中に柔道が苦手な子供たちがオンライン上で学びあう日曜クラスの運営、2021年に14の大学柔道部の魅力を中高生に伝えるオンラインイベント”Univ.Judo Day”、そして、大人も参加していますが、子供を主な対象として「柔道川柳&絵はがき展」を開催するなどしています。

子供向けのオンライン講座は様々なものが考えられますが、オンラインを活用して、柔道関係者の世代間の交流ができる仕組みをつくることが一つの重要な点であると考えています。

例えば、「Univ. Judo Day」は、大学柔道部の学生と接することがない中高生に対して、大学生と接することで自分の進路をより豊かに考えることができる機会を提供するものでした。同じように、もし「これからどんな仕事に就こうか」と考えている子供たちが、すでに仕事に就いている様々な大人の柔道経験者と接する機会があれば、柔道というご縁が生み出すキャリア教育となります。

2022年は、第2回目となる”Univ. Judo Day”や「柔道川柳&絵はがき展」の開催を進め、その他についてはこれから有志と検討していけたらと思います。

4. 国際・大人

一説によると、世界の柔道人口は5000万人といいますが、海外の大人が学ぶ、そして、海外の大人と日本の大人が共に学ぶ機会を対象とした活動です。

2015年1月に設立以来、子供たちの国際柔道交流の支援に取り組んできましたが、コロナ禍以前は、海外の大人を対象した活動はあまりありません。ただ、2016年9月から年2回、フォーラムJUDO3.0を開催していましたが、海外での開催の希望があり、ヨーロッパでフォーラムJUDO3.0を開催することを検討していました。

コロナ禍以降は、オンライン上で海外と日本の大人、特に柔道の指導者が共に学ぶ機会を作っており、柔道の技、礼法、柔道と環境、柔道と企業経営、柔道と動作分析など様々なテーマでの勉強会のほか、2021年3月からは、障害と柔道をテーマにした定期的な勉強会、国際インクルーシブ柔道セミナーを開催するなどをしています。

この海外と日本の指導者が共に学ぶ機会については二つの意義があると思います。

一つは指導者の資質の向上です。各国の柔道協会が指導者の海外留学を行ったりしていますが、異国の指導者と共に学ぶ機会は優れた教育機会となります。実際に海外に行くことは費用も労力もかかるためごく一部の指導者にしかその機会はありませんでしたが、オンライン上であれば、技術上、世界中の指導者と「共に学ぶ」ことができます。

国際柔道連盟が「IFJアカデミー」を設立して指導者の育成に取り組んでいますが、優れた指導者を育成する国際的な教育システムはこれからの柔道の重要なポイントだと思います。したがって、judo3.0のように、誰でも「先生」になることができる場を作って、世界中の指導者が「共に学ぶ」ことができる教育環境を作る挑戦は必要とされていると実感しています。

もう一つは、海外と日本の指導者が「共に学ぶ」ことで、子供たちの国際柔道交流が促進されることです。顔見知りの先生の柔道クラブに出稽古に行くことはよくあると思いますが、同様に、顔見知りの柔道クラブの先生が海外にいたら、そこに生徒を連れていきたいと思うようになります。もし日本のそれぞれの地域の指導者が様々な海外の柔道指導者と「共に学び」、顔見知りになったら、たくさんの海外の生徒が日本を訪れるようになると思っています。

このように重要な意義のある分野ですが、英語、時差、また、日本語の通訳があっても外国という心理的な障壁などがあって、「共に学ぶ」機会を作ることは容易ではありません。

2022年は、国際インクルーシブセミナーを引き続き開催するとともに、柔道の技や哲学など、海外の指導者が高い関心を寄せるテーマでのセミナーなどを検討していけたらと思っています。

5. 国際・青少年

子供たちの国際柔道交流は、2015年1月の設立以来、最も力を入れてきた活動です。日本から海外へ、海外から日本へ、という二つの流れがありますが、近年は、特にヨーロッパの生徒が日本の地域の柔道クラブに来ることに力を入れており、そのかいあって年々ヨーロッパから日本を訪れる生徒が増えていました。

コロナ禍になって予定していた国際柔道交流は中止となり、オンラインを活用した国際交流に取り組んでいます。テレビ番組BSフジ「JUDU」に取り上げていただきましたが、2020年は日本と海外のクラブ間のオンライン合同稽古をよく開催し、2021年は、オンライン合同稽古のほか、三か国の中高生がオンライン上でミニ講義を行うクラスを運営するなど、様々な機会づくりに取り組みました。

これらの経験を踏まえて、2022年の活動について触れていきたいと思います。

リアルの国際柔道交流

現在、コロナ禍で国際的な移動は制限されており、また、ワクチン接種によってリスクが減少しても、日本から海外に行って柔道をしたり、海外の生徒を日本で受け入れたりすることはまだ難しい状況だと思います。しかし、すでに海外のクラブから「日本に行きたい」という問い合わせを受けていますが、いずれ可能になる日が来ます。

日本から海外へ、という点については様々な課題がありますが、海外に行って柔道をすることは子供にとって優れた教育機会であることを広く伝えていくことが大事なことになります。

また、日本の経済は長く停滞し、海外旅行する日本人は減少しているので、海外に子供を行かせる余力のある家庭は少なくなっているといいます。

海外から日本に来る柔道クラブの中には、クラブ主催のイベントで資金を集めて生徒の渡航費をクラブが負担しているところもあれば、地元の企業がスポンサーとなっているところもあります。いずれも指導者がリーダーシップを発揮してファンドレイズしているわけですが、このようなマインドとノウハウを日本に広げて、地域のクラブ主導で生徒が海外に行く流れを作ることができないか、さらに将来的には、ここに特化した基金をつくって奨学金制度を運用することなどが検討課題になります。

他方、海外から日本へ、という点については、日本に生徒を連れていきたい海外の指導者を探すとともに、受け入れる日本側の状況次第になります。

ここで大事な視点は、日本という国を世界中の子供たちの学びの場にする、というビジョンだと思います。松前重義氏が国際武道大学を創設した理由の一つもこの点にありますが、このようなビジョンを共有する仲間を探して、国際的に広いネットワークをもったチームを作っていくことが課題となります。

オンラインの国際的な学びの場

世界中の子供たちが「共に学ぶ」という体験ができる場です。同時に、先に述べた、オンライン上で共に学び、リアルの世界で友人のいる異国に行って柔道をする、という流れを作ることができる領域でもあります。

教育全般の話題になりますが、これからの理想の教育のカタチの一つは、仮想の世界で自分の関心に即したカタチで世界中の人々と共に学び、リアルの世界で現場の良さ、生身の人間の良さを活かした学びをするというものになると思います。

したがって、もしこれからの青少年の教育としての柔道を構想するとしたら、もっとも注力すべきはこの領域だと考えています。

具体的には様々なイベントを企画していくことになりますが、詳細は有志と検討していきたいと思います。

5. 教材開発

3.0オンラインカフェや勉強会、フォーラムなどを通じて素晴らしいお話をたくさん伺っています。これらの知見をその場に参加している方々だけでなく、記事や動画、書籍などを通じて、より多くの人々が学ぶことができるようにする取り組みです。

2016年からWEBマガジンの運営、2020年に書籍「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」の出版(翌年に電子書籍化)、動画については2017年にyoutubeチャンネルを開設し、2021年からオンライン勉強会などでの講義を動画で配信するなどの取り組みを行っています(2021年は78本の動画)。

2022年は、動画配信に力を入れるとともに、国内での教材の出版のほか、海外での教材の出版に取り組んでいきます。

6. 柔道部

有志でチームを作って、2018年から日本マスターズ柔道大会の団体戦に、2019年から全日本実業柔道個人選手権大会に参加しています。日本各地に散らばっている有志が集まるきっかけになる場でもあるので、引き続き、チームを豊かにしていけたらと思います。

3. メンバー

上記のスクール運営を行うために何が必要としているか、以下簡単に触れたいと思います。

1. サポーター・寄付者

judo3.0の活動はNPO法人として会員サポーター、寄付者に支えられて活動しており、支えてくださる人々が増えれば増えるほど理想に近づきます。支えていただける甲斐かいのある団体に成長したいと思うので、ぜひサポーターとしての参加や寄付をお願いいたします。

2. ゲスト・コーディネーター

judo3.0の学びの場は、登壇してお話をしてくださったり、プロジェクトに情熱をもって取り組む人々のおかげで生まれます。

judo3.0のスクールは、誰もが「先生」になったり「生徒」になったり、「プロジェクト」を立ち上げたりすることができる場をつくり、このような場を機能させることで学びの機会を作っています。

昨年はのべ182名の皆さまが「先生」「ゲスト」として登壇くださり、112回の学びの場が生まれ、のべ2300名超の皆さまに参加いただきました。

したがって、さらにより多くの人々に「共に学ぶ」機会を提供するためには、より多くの皆さまに「先生」「ゲスト」として登壇いただけることが必要であり、また、テーマやゲストを検討して調整して学びの場を作ることができる「コーディネーター」の存在が重要となってきます。

2022年は、引き続き、「先生」となってくださる方々を募集するとともに(自薦・他薦問いません)、「コーディネーター」として企画してくださる方を募集していきます。

3. 柔道協会

judo3.0は、都道府県、市区町村、少年団、中学や高校、大学などに関係する様々な柔道協会さまのご協力をいただき活動しています。例えば、2021年の「発達が気になる子が輝く柔道サミット」は石川県柔道連盟さまに、「柔道研修フォーラム」は岐阜県柔道協会さまにご協力をいただきました。今後ともより多くの柔道協会さまのご意見を伺い、研修の機会を作るなどの活動をしていけたらと思っています。

4. 大学・研究機関

judo3.0では多くの大学の先生や研究者の皆様にご協力いただき、学びの場を作っています。様々な知見が集積されている大学や研究機関との連携はこれから学びの場を広げていくうえで重要な点になるので、2022年はより広げていきたいと思います。

5. 協力者

上記以外にも様々な皆さまにご協力をいただいて活動しています。例えば、国際柔道交流の受け入れを行う場合、受け入れてくださる柔道クラブの皆様のご協力が必要ですし、イベントを企画したときはSNSでシェアしてくださる方のご協力が必要です。

日々力不足を痛感していますが、すべての関係する皆さまについて、judo3.0に関わってよかったと思っていただけるような活動と関わりができたらと思っています。

以上、長文となりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ぜひjudo3.0の活動に関わっていただけたら幸いです。今年も何卒よろしくお願い申し上げます。(文責・酒井)。

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