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みんなの居場所、それが柔道!フランス・スペインの道場から学んだこと 水見智織氏(尚志館當摩道場)

柔道には様々な可能性がある。その一つが生涯柔道であり、人々の生活を末永く豊かにする柔道のカタチである。フランスやスペインでは、すでに柔道が幅広い年齢層の人々が楽しむスポーツとして定着していると聞くが、そんな欧州の柔道の現場を、2024年10月、尚志館當摩道場の水見智織氏が視察してきた。フランスの2道場、スペインの1道場を訪れた水見氏が見た「社会柔道」の姿と、そこから見えてきた道場の未来とは。

フランス・ブルターニュ

最初に訪れたのは、フランス・ブルターニュ地方にあるプルーベニの道場。日本人初のオリンピック金メダリストとして知られる佐々木光先生が建てた秀鋭館道場だ。この道場では、6つのカテゴリーに分かれた練習が行われており、水見氏は高齢者向けの体操クラスと15歳以上の一般クラスに参加した。 「高齢者向けの体操では、先生の元気で楽しそうな様子が印象的でした」と水見氏は目を輝かせる。独自の方法を採用し、1分間ごとに異なる運動を音楽に合わせて行う。「棒を振り下ろしたり、足を上げる運動をしたり、順繰りにいろんな運動をしていきます。みんなが一斉に同じことをするのではなく、時間で区切って行うことで、飽きさせない工夫がされているんです」

運動後には、必ずコーヒータイムが設けられている。「佐々木先生先生は一人一人に耳を傾けながら、豊富な話題で会話を楽しんでいらっしゃいました。この交流の時間も、とても大切なんだと感じました」 特に印象的だったのは、高校生から50代、60代まで、幅広い年齢層の人々が自然に一緒に稽古する光景だ。「日本では中学生は中学生、高校生は高校生と分かれがちですが、ここでは年齢を気にせず、当たり前のように組み合っていました。とても斬新でした」

佐々木先生は「フランスは学校柔道ではなく社会柔道だから、こういう練習が成り立つ」と語った。この言葉は、水見氏の心に深く刻まれることになる。

フランス・メネシ―

2つ目の訪問先は、パリから1時間ほどの場所にあるメネシーの道場。市街地に位置する広めの道場で、活気に満ちていた。ここでは、低学年、高学年から15歳未満、15歳以上という3つのカテゴリーの稽古に連続して参加した。 この道場で特筆すべきは、その組織体制だ。「柔道を知らない女性マネージャーがいて、その方が事務や経理、運営を担当されているんです」と水見氏。30代、40代の指導者たちは「この方がいないとチームは成り立たない」と口を揃える。「組織的にもしっかりしていて、柔道の技術指導以外の部分でのサポート体制の重要性を学びました」

道場の至る所に日本文化の影響が見られた。「道場には講道館の写真や日本の国旗が掲げられ、掲示物には漢字が使われていました。選手たちも漢字の入ったTシャツを着ていたり、帯に漢字で刺繍が入っていたり。フランスで柔道をされている方々は、日本の文化そのものにも強い関心を持っているんだと感じました」 「日本から来た柔道家というだけで、特別な目で見てくださるんです」と水見氏は照れくさそうに語る。「子供たちが柔道着の背中にサインを求めてきて、10人以上の列ができました。柔道をしている日本人に対する敬意の深さを感じ、もっとしっかりしなければと身が引き締まる思いでした」

訪問時は、バカンス前の最後の練習日だった。「練習後にはみんなで立食パーティーをする習慣があるそうです。好きなものを食べて飲んで、和やかに交流する。こういった親睦の機会も大切にされているんですね」

スペイン

最後に訪れたのは、バルセロナから90km離れたオソノという町の道場。judo3.0を通じて知り合ったベルトラン先生の道場だ。約30畳ほどの小規模な道場ながら、ここで水見氏は柔道の持つ力を改めて実感することになる。

「子供たちの中には、やんちゃな子や発達障害のあるお子さんもいました」と水見氏は語る。「私の道場にも似たような子供たちがいるので、すぐに共感が生まれました。言葉は通じなくても、どう指導したいか、どう落ち着かせてあげたいかという気持ちが自然と湧いてきたんです」 その時の不思議な感覚を、水見氏はこう表現する。「スペイン語はほとんど分からないのに、なぜか自分の生徒に教えているような感覚になるんです。肌の色も、話す言葉も関係なく、純粋に柔道を通じて心が通じ合える。それは本当に不思議で素晴らしい経験でした」

「社会柔道」が切り開く新しい可能性

フランス、スペインの道場を訪れて、水見氏は「社会柔道」の可能性を確信したという。「競技としての柔道ももちろん大切ですが、体を鍛えたい人、仲間を作りたい人など、様々な動機で柔道に携われる場所にしていきたい」 特に印象的だったのは、勝ち負けにこだわらない姿勢だ。「試合に出る人もいますが、それは試合に出ることを楽しむという感覚。日本の柔道とは動機が違うように感じました。勝負に囚われないことで、心が解放され、自由度が一気に上がるのではないでしょうか」 「厳しい、ハードルが高い、痛いといったネガティブな印象がある柔道を、視点を変えてポジティブなものとして発信していきたい。道場が喜びや笑顔であふれる場所になれば、それは最高の場所になるはずです」

最後に、海外の道場訪問を考えている人へのメッセージも。「言葉が通じなくても、柔道を通じて心は通じ合えます。技の名前や基本的な声かけは日本語を使うので、それだけでも十分コミュニケーションは取れます。ジェスチャーや単語を組み合わせるだけでも、きっと素晴らしい経験ができるはずです。柔道をしているというだけで、それは大きな強みになります」  

インタビュー動画

詳細はこちらのインタビュー動画をご覧ください。

フランス・スペインを訪問したら、自分の道場の素敵な未来が見えた -水見智織氏(尚志館當摩道場)

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