5名から60名へ!千葉の柏柔道クラブが急成長した理由 -鈴木克彦先生インタビュー
ポイント
柔道人口が減少傾向にある中、千葉県の柏柔道クラブは会員数を5名から60名まで増やすことに成功した。その秘訣は「柔道遊び」を取り入れた独自の指導方法と、週1回・低額な会費という参加しやすい環境づくりにあった。
インタビュー概要
柔道クラブ存続の危機から再建へ
柏柔道クラブは昭和53年に市の教育委員会の柔道教室として始まり、翌年から民間の道場として運営を続けてきた。鈴木氏が指導を始めた当初は20名近くの生徒がいたものの、徐々に減少。ついには5名(うち3名が自身の子ども)にまで減少し、道場の存続が危ぶまれる事態となった。
「先代が『もう閉めよう』と言った時、『待ってください。私の子どもたち3人もいるので、私がやらせていただきます』とお願いしました」と鈴木氏は当時を振り返る。
会員数増加への取り組み
会員数を増やすため、鈴木氏はまずホームページの作成や、スーパーマーケットへのポスター掲示など、積極的な情報発信を開始。「最初の半年は全く反応がありませんでしたが、その後、少しずつ問い合わせが来るようになりました」
SNSでの情報発信に加え、兄弟での入会や、生徒が友達を連れてくるなど口コミでも会員が増加。3年目には20名程度まで回復し、コロナ禍前には40名にまで増加。東京オリンピック後には月3-4名ずつ新規入会者が続き、現在は60名程度まで成長している。
「遊び」を取り入れた新しい指導方針
鈴木氏は当初、厳しい指導スタイルを採用していたが、子どもたちの継続率が上がらないことに課題を感じていた。judo3.0の活動に参加したことをきっかけに、「柔道遊び」を取り入れた新しい指導方法に転換。
「2時間の練習時間のうち、半分を準備運動や基礎運動、遊びに使っています。毎回違う遊びを取り入れ、子どもたちが『今日は何をするんだろう』というワクワク感を大切にしています」
特に人気なのは「ケンケン相撲」という遊び。全員で畳の中に入り、小さい子から大きい子まで一緒になって楽しむ。右足で1本目、左足で2本目など、バリエーションをつけて実施している。
週1回・低額な会費で参加しやすい環境づくり
柏柔道クラブの特徴は、土曜日の夕方(17:15-19:15)のみの開催という点。「平日は仕事で子どもを送迎できない保護者も多く、土曜日なら連れて来られる」と鈴木氏は説明する。
また、月謝を1,000円に抑え、入会金も不要とすることで、経済的なハードルを下げている。さらに、他のスポーツとの両立も認めており、実際に半数近くの子どもたちが水泳やサッカーなど他の競技も並行して行っている。
入会前には1ヶ月程度の体験期間を設け、子どもたち自身の意思を尊重。「10人体験に来ると、7-8人は入会してくれます」と鈴木氏は手応えを語る。
大会参加は強制せず、自主性を重視
多くの少年柔道クラブでは大会参加が当たり前となっているが、柏柔道クラブでは強制していない。「子どもと保護者が望む場合のみ参加する」という方針を採用。60名の会員のうち、実際に試合に出場しているのは20名程度という。
これからの展望
中学生になっても続けられる環境づくりとして、「柏柔道クラブジュニア」を立ち上げ。また、より多く練習したい子どものために「日曜アネックス」も開設し、段階的に活動の幅を広げている。
さらに、少年柔道の後に「フリー柔道」の時間を設け、小学生から80代まで幅広い年齢層が参加できる場も提供。1回100円で気軽に参加できる仕組みを作り、地域に開かれた道場を目指している。
「子どもたちが体を動かすことを楽しむ場所として、まずは柔道遊びを通じて楽しんでもらう。その中で本格的に柔道をやりたい子には、そのためのフォローもしていく。長く続けられる柔道を目指していきたい」と鈴木氏は語った。