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高齢者の柔道のこれからを考える -第1回シニア柔道フォーラム(国士館大学)に参加して-

2022年3月12日(土)、国士舘大学の大道場にて、高齢者の柔道を検討するシニア柔道フォーラムが開催、本テーマに関心がある有志20名が全国から集まり、4名の講師による講義とプログラム体験及び参加者同士の話し合いが行われました。以下、その概要をお伝えいたします(3.0オンラインカフェ編集部)。

1.開催に至る経緯
2.当日のプログラム概要
3.ご参加者の感想
4.今後について

1. 開催に至る経緯

高齢になってから柔道を始める方はとても少ないと思います。柔道の経験者でも多くは年を重ねるにつれて柔道をしなくなります。

柔道をやったことがないシニアでも、健康や生きがいとして柔道を始めることができる、そして、それぞれの状況に合わせて柔道を親しむことができる、そんな未来をつくることができないか?

ちょうど一年前、2021年3月19日(金)、オンライン上の勉強会(3.0オンラインカフェ)で、国士舘大学教授の森脇保彦氏から「なぜ年を取ると柔道をしなくなるのか?高齢者が楽しむ柔道の開発!」というテーマでお話しいただきました。

これがきっかけとなって、森脇先生に主宰いただき、有志によるシニアの柔道について話し合うオンライン上の研究会が始まりました。第1回は同年6月16日(講師:浅沼剛成氏、第2回は9月22日(講師:向井淳也氏・長谷川正仁氏)、第3回は11月24日(講師:佐々木彩乃氏・竹熊カツマタ麻子氏)、第4回は2022年2月9日(講師:マーヤ・ソリドーワル氏)と研究を重ねてきました。

さらに、2021年10月31日(日)には、国士舘大学の道場にて、「柔道けんこう体操」を開発した森脇保彦氏、日本マスターズ柔道協会の長谷川正仁氏、国際看護学の研究者であり高齢者看護の専門家であるTakekuma Katsumata Asako氏、比較武道研究者で、ドイツの生涯柔道に造詣の深いマーヤ・ソリドーワル氏、筑波大学で看護学を専攻する佐々木彩乃氏など、専門的知見を有する有志が集まり、実際に高齢者に対してどのようなプログラムがよいのか、どのような配慮が必要なのか、などを協議しました。

このような経緯を経て、今回のシニア柔道フォーラムは、①実際に高齢者に向けて開発された柔道プログラムを体験して、プログラム開発を加速させること、②全国のシニアの柔道に関心がある方々が出会い情報交換することを目的として開催されました。

2. 当日のプログラムの概要

①投げない柔道で健康長寿!柔道けんこう体操をやってみる(森脇保彦氏 国士館大学)

「柔道けんこう体操」を開発した森脇先生による解説。高齢者が転びやすくなるのは姿勢を維持する筋肉の衰えと関係しており、姿勢を維持して身体を動かすプログラムは転倒予防の効果があること、特に、柔道の攻防はバランスの崩しあいであるので効果が高いと思われこと、また、相手を動かして、相手の反応を利用して相手のバランスを崩す、という「崩し」の要素を中核としてプログラムを開発したことについてなど。

二人組になって、相手を前後左右に動かしながら、相手を崩すことを楽しむ約束稽古。投げるのではなく、受と取が組み合って歩き回るだけなので安全にできる。上級者となると、「取」は、姿勢を崩さずに「受」を前後左右に動かすことができ、「受」の反応を誘う。「受」がバランスを崩して大きく一歩踏み出したり、大きく一歩後退したりすると「崩れた」ことが分かる。柔道の経験がなかったり、はじめてやる場合は、お互いの足のステップが合わなかったり(相手の足を踏んでしまう)、身体全体を使って相手を動かすのではなく、手だけで相手を動かそうとして動かなかったりなどする。

実際に柔道けんこう体操を体験した参加者がその感想を話したり、プログラムをどのように活用したらいいか、どのように改善したらいいかなどを話し合いました。

②高齢者介護施設での柔道けんこう体操の実践(浅沼剛成氏)

東京都八丈島で高齢者介護施設(デイサービス)を経営する浅沼剛成氏から、実際に高齢者に柔道けんこう体操を実施して、どのような効果や課題があったかについての報告。実施している様子の映像も見せていただきました。

③ドイツの生涯柔道プログラム(マーヤ・ソリドーワル氏 津田塾大学)

比較武道研修者のマーヤ・ソリドーワル氏から、ドイツ柔道連盟は青少年向けの柔道だけでなく、中高年向けの柔道にも取り組んでいるを伺い、実際のプログラムについて体験しました。

④高齢者における「組む」ことの重要性(Takekuma Katsumata Asako氏 筑波大学教授)

筑波大学国際看護学の教授で、高齢者看護の専門家であるTakekuma氏から、人と接する機会が少なくなるなどの高齢者の現状と課題、柔術の稽古で愛情ホルモンといわれるオキシトシンが分泌したというイスラエルの研究の紹介、高齢者に組み合う機会を提供することの重要性についてなど。その後、参加者同士で上記を念頭に寝技を行いました。

⑤参加者ディスカッション

今回の学びを経て、参加者がそれぞれがどのようなことを学んだか、どんな風に活かしていきたいかなどを話し合いました。

3.ご参加者の感想

  • グールプセッションにて健康体操は高齢者に有効な動きだが,この動きを柔道を始める未就学児,小学生などにも効果的ではないかという意見があり,正にその通りだと思いました。
  • 柔道は子供から高齢者までさまざまな人に応じた、さまざまな形があり、いろんな可能性を学べました。
  • 改めて日常生活の中で『後に下る』という動きはないなと気付き、高齢者が後に転倒することの防止に有益だと感じました。
  • 皆さんと一緒に体験する事で意見交換が出来、更なる可能性を多面的に見ることが出来ました。
  • 襷掛けの動きを工夫して、取り入れたいと思っています。理由は、二人で行うので、転倒の心配が無い。この様な、二人で行う運動は、一人で行う運動より、受ける側は、安心だと思います。継ぎ足で歩くので、力が入り、筋力のアップに繋がると思います。

4.今後について

参加者は「柔道クラブの新しい形が見えてきた」「自分がいる地域でこの会を開催したい」「新規事業の参考になるかもしれない」など様々な感想をお話しされており、これからの探求を楽しみにしている様子でした。このフォーラムの土台となった高齢者と柔道のオンライン上の研究会は今後も開催します。

2022年6月8日  20:00〜21:30 第5回研究会(オンライン)
2022年9月7日  20:00〜21:30 第6回研究会(オンライン)

どなたでもご参加いただけますので気軽にお越しいただけたら幸いです。詳細はこちらの特集ページをご覧ください。

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