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インクルーシブな世界を柔道で!第1回インクルーシブ柔道国際セミナー報告

NPO法人judo3.0は、2021年3月14日(日)17:00-21:00、「インクルーシブな柔道」をテーマにしたオンライン国際セミナーを開催し、4名の講師が報告、総勢40名超の国内外の柔道指導者らが参加しました。以下、そのレポートです。

ビクトリア先生(スロベニア)

初めに、今回のセミナーのコーディネーターを務めるビクトリア先生から、インクルーシブな柔道に柔道に関心がある人々が出会い、話し合う機会の重要性について、そして、今回の報告者4名の紹介があった。

ケリー先生(イギリス)・大会でのクラス分けの基準の統一の重要性など

a)報告の要旨

柔道大会では公平で安全なクラス分けが必要。それぞれの障害の程度、柔道の技量などを考慮してクラス分けをするが、インクルーシブな柔道を世界的に広げていくためには、その基準を世界的に統一することが大事。Virtus(国際知的障がい者スポーツ連盟)は、柔道の技量をベースにして5つのレベルに分けている。世界各地で普遍的な基準に従った安全で公正な大会が開催されるようになったらいい。また、マディ先生から「IFoN」(主にヨーロッパで知的障がい者柔道の推進と知的障がい者の法的な支援活動に取り組む)の活動紹介。

b)質疑応答&コメント

柔道の種類を問わず、柔道の普及を図るうえで大会の運営が大事であるが、そのポイントは、どのようにして適切なクラス分けをするかにある。ここでいうクラス分けとは、例えば、年齢でクラス分けをした大会(小学生、中学生、高校生)、所属でクラス分けした大会(教員、国立大学、警察官、実業団)、柔道の技量でクラス分けした大会(実業団1部、2部)などがある。

同様に、障害がある人々の柔道の大会を運営するためにはクラス分けが大事だが、この基準を世界的に統一することができたら、大会が活発になり、インクルーシブな柔道がもっと普及するようになる、というのがケリー先生のお話であった。

ケリー先生が取り組んでいる「Virtus(国際知的障がい者スポーツ連盟)」の柔道では5つのレベル(5つのクラス分けの基準)を作っているという。ここで大事なポイントは、障害の程度でクラス分けするのではなく、あくまで柔道の力量でクラス分けをする点にあるという。以下、拝見した資料の日本語訳である。


レベル1(Most Able Athlete)
クラブレベルでメインストリームの選手と一緒に練習し、競技することができる選手です。競技の意味と目標をよく理解している。国内および国際大会に参加することができる。
運動能力および認知能力 – 良好な水準

レベル2(More Able Athlete)
主流のアスリートと一緒にトレーニングを行い、軽い競技(乱取り)に参加できるアスリート。競技の意味や目的を理解している。地元の選手権やトーナメントに参加することができる。
運動能力および認知能力 – 平均的な水準。意思決定に問題あり

レベル3(Medium Athlete)
主流のアスリートと一緒にトレーニングに参加できるが、同じレベルのアスリートとの特別な競技会にのみ参加するアスリート。競技のルール、意味、目標のほとんどを理解しています。
運動能力および認知能力 – 平均以下。単一の動きの応用。繰り返される命令の強化。

レベル4(Medium / Less Able Athlete)
特別なトレーニングや競技会にしか参加できないアスリートです。このアスリートは、競技中にガイドが必要ですが、競技のルールや目標のほとんどを理解しています。競技者は寝技に参加することが制限される場合があります。
動きと認知能力 – 情緒的または身体的な障害があるため、柔道の技を完成まで行うことが制限されます。運動能力が低い。

レベル5(Less Able Athlete)
専門家のケアがなければ、特別なトレーニングや大会に参加することができないアスリートです。このアスリートは競技中に多くの指導を必要とします。競技者に合わせて競技内容を調整する必要があるかもしれません。安全性を考慮して、この選手は地上での競技(寝技)のみに制限される場合があります。
運動能力や認知能力:障害のために制限されています。


各国どこでも大会を運営していくときはクラス分けが課題になるので、これまでの経験に基づき作成されてきた基準とノウハウを共有していくことが便利であり、大事であることが分かった。

辻和也先生(日本)・日本で最も古くから活動しているわらしべ会の柔道教室の歩み

a)報告要旨

日本では、大阪の村井医師が1970年代から脳性麻痺の子供に柔道を提供。柔道をすると医療的な支援では見られない本人の意欲の向上が見られた。1980年代からは身体障害がある人々、2010年代からは知的障害がある人々への柔道教室を運営して、現在は毎週1回、10名程度の大人が参加して稽古している。ヨーロッパとの国際柔道交流やアメリカのスペシャルオリンピックス大会の視察なども行ってきた。

b)質疑応答&コメント

1970年代から障害のある人々への柔道指導に取り組み、日本を代表するインクルーシブな柔道の実践者である「わらしべ会」の活動報告である。

20~30年前からインクルーシブな柔道に取り組んでいるヨーロッパの指導者からは、各地で何人かの有志が活動してるが、まとめ役となる国レベルの競技団体が積極的に取り組まないことから、誰がどのような活動をしているか分からず、情報共有ができなかったことを嘆く発言も見られた。

クロアチアでインクルーシブな柔道に取り組むマリーナ先生(Fuji Judo Club)から、脳性まひと柔道について辻先生と質疑応答があったが、マリーナ先生は脳性まひと柔道について研究しており、書籍を出版予定だという。わらしべ会を設立した村井医師は、脳性麻痺のリハビリとして、ハンガリーの医師 Andreas Petoが考案したConductive Education(Peto法)を柔道に応用した手法を開発したが、マリーナ先生の研究の進展が楽しみである。

サヨナラ先生(セルビア)・有志でのインクルーシブな柔道クラブの立ち上げ

a)報告の要旨

2013年からインクルーシブな柔道に触れて衝撃を受ける。2017年からインクルーシブな柔道教室(Inkluzivni Judo Sombor)を有志ではじめ、2018,2019,2020年と活動を続け、セミナーを開催したり、大会に出場したり、様々な団体と関係を築いて支援を受けたりしながら、インクルーシブな柔道クラブを設立、運営している。インクルーシブな柔道のゴールは、生徒一人ひとりが最高のバージョンの自分になることである。

b)質疑応答&コメント

有志が始めた活動を4,5年も継続したらどのように展開するのか、情熱と行動の影響力の大きさを学ぶ機会となった。質疑応答では、セミナーなどを開催しているが、一般の普通の柔道の指導者に向けてインクルーシブな柔道を広めていくことは難しい、その難しさについて話題となった。

この中で、障害のある子供たち、大人たちの競技大会を整備していくことは大事であるが、最も重要なことは指導者への教育であり、ここに優先的に力を入れていくことが必要だ、ということが話し合われた。

内村香菜先生(日本)・放課後等デイサービスの柔道療育

a)報告の要旨

フランスでインクルーシブな柔道を学ぶなどして、鹿児島で放課後等デイサービス笑光で柔道療育を始めた。子供たちが柔道をすることで様々な成長を見せている。衝動的な行動が減ったり、集中するようになったり、中性脂肪が減って健康になったり、新しいことに意欲的に挑戦するようになったり、こだわりによる問題行動が減ったりなど。柔道療法を広めていくことなどが今後の課題である。

b)質疑応答&コメント

内村先生の報告では動画も用いて柔道療育の様子を報告いただいたが、黙想のシーンがあり、黙想・瞑想の効果について話題になった。この点、瞑想と発達障害について研究しているガストン先生から、瞑想は他者への共感を育む効能があることなどの説明があり、落ち着いていられない生徒がどのようにしたら落ち着いて黙想に取り組むことができるようになるのか、などについて意見が交わされた(照明を落とす、帯を生徒の前において視線を固定するなど)。

そのほか、「ハンディキャップ柔道」「特別支援柔道」「アダプティブ柔道」「インクルーシブ柔道」など、概念の重要性とその変遷が話題になった。

所感

主な参加者はヨーロッパ諸国と日本からであったが、情熱のある指導者が集い、それぞれの実践や問題意識が共有され、またそれぞれの情熱にふれることができ、大変有意義な会となった。ITの発展、そしてコロナによるビデオ会議利用者の増加などにより、ローカルな人々が地域や国を超えて話し合うことが可能になっており、情熱のある有志が世界的につながっていったとき、何が起きるのか、また何を興せばいいか、これからが楽しみである。次回、第2回のセミナーは、2021年5月16日(日)17:00-20:00である(文責・酒井重義judo3.0)。

謝意

本セミナーの通訳は竹熊カツマタ麻子氏にご協力いただきました。

参加者のSNSの投稿など


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