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コンパニオンではない。なぜ女性は柔道に積極的に参加できないのか?

2022年9月9日(金)、140回目の3.0オンラインカフェは、「なぜ多くの女性は柔道の活動に積極的に参加できないのか?」というテーマで開催され、国内外から入れ替わり立ち代わり30名の皆様が参加、4時間超にわたり話し合いが行われました。今後の柔道を考えるうえで参考になる論点や課題がたくさん出されたので、以下、その一部を紹介していきたいと思います(3.0マガジン編集部)。

目次

1.女性の選手・愛好者・指導者に共通する課題
(1)高校や大学の柔道部を卒業後に柔道を辞める。大人になって柔道できる場所がない。
(2)セクハラ・パワハラ・いじめ・しごきの根絶
(3)柔道未経験で、運動が苦手な大人の女性が参加できる環境を

2. 女性の指導者に関する課題
(1)子供を連れて参加できない
(2)女性指導者というキャリアへのサポート
(3)コンパニオンではない
(4)「競技実績がないから」と言われる
(5)女子柔道の普及の活動を続けるコツ

1.女性の選手・愛好者・指導者に共通する課題

(1)高校や大学の柔道部を卒業後に柔道を辞める。大人になって柔道できる場所がない。

(大学進学)
多くの女子高校生は大学に進学しても柔道部には入らない。その理由は「もういい」「つらい・しんどい」など燃え尽きているから。男子高校生は「とりあえず大学に行って柔道を続けよう」という理由で大学に進学して柔道部に入部することが多いが、女子高校生は大学に進学する際、どんな職業に就くか、どんな資格を取得するか、具体的に決めていることが多い。したがって「とりあえず大学にいって柔道を続けよう」という女子高校生は、男子高校生と比較すると少ない。また、競技柔道しか知らないため、生涯柔道として自分のペースで無理なく楽しく柔道ができるということを知らないし、そのような柔道ができる場もない。

(就職)
女子高校生、そして、柔道部に在籍している女子大学生が就職するとき、柔道を辞める。大人の女性が柔道を続けることができる場所がないからである。自分の出身道場で小学生と一緒に柔道をするか、子供が生まれたときに子供が入会した少年柔道クラブで子供と一緒に柔道するしかない。

(登録)
高校又は大学の柔道部に在籍していた女性は卒業によって柔道を辞めるため、全日本柔道連盟の登録から外れる。登録から外れると、何処に誰がいるか分からなくなるので、例えば、大人の女性向けの普及イベントを企画しても案内することができない。現在、試合に出場しない限り登録するメリットがないので、ほとんどの高校生、大学生は登録から外れるが、試合に出場しない、また、柔道できる場がないため所属がない女性でも、潜在的に将来柔道を再開する可能性があるので、何らかの登録を維持する仕組みが必要ではないか。例えば登録していたらスマホのアプリで試合が視聴できるとか、新しい登録が必要だと思う。

(大会と昇段)
就職をして競技者を続けようと思っても、大人の女性が参加できる大会が少ない。全国高段者大会は男性だけの大会である。大会に出場しないと昇段に必要なポイントがたまらないので、女性は昇段しにくい。

(2)セクハラ・パワハラ・いじめ・しごきの根絶

男性指導者による女性生徒へのパワハラ・セクハラ、先輩から後輩へのイジメ・しごきなどがあったら、柔道を続けられるはずがない。このようなことを根絶していかないといけない。

(3)柔道未経験で、運動が苦手な大人の女性が参加できる環境を

(柔道はハードルが高すぎる、簡単な運動クラス)
運動に苦手意識がある大人の女性にとって柔道はハードルが高すぎる。「お母さんも一緒にどうですか?」と誘われることがある。しかし、子供達は準備運動で普通に前転をしたりしているが、自分は前転ができないので、誘われても柔道を始めようとは思わない。もっと簡単な運動でないと始められない。この点、フランスやドイツでは「体操」クラスがあって、大人の女性が柔道着を着ずにストレッチや筋トレをするなど、女性が参加しやすいエクササイズのクラスがある。そのようなライトな取り組みが必要ではないか。

(相手を投げる体験はどうか)
運動が苦手な大人の女性向けに、柔道の練習はもっと工夫できる。最初は、前転はしなくていいし、受身もしなくていい。柔道経験者の受を用意して、人を投げる、という体験をしてもらうことが大事。道場でエクササイズをするのもいいが、それだと柔道そのものの魅力が伝わらず、続けないのではないか。運動が苦手な大人の女性にも柔道の魅力が伝わるような工夫が必要である。

2. 女性の指導者に関する課題

(1)子供を連れて参加できない

(託児への理解)
子育てをしているとき、子供を連れて参加できなければ、指導者としての仕事ができないことがある。子供を連れて参加することに周りが寛容になること、そして託児所を用意したり、周りが積極的に託児を手伝うことが必要。「あの人はいつも子供を連れてくるから、ちょっと」と言われてしまったり、子供を連れてこれないのであれば、指導者としての仕事ができない。

(女性が自ら提案して改善)
子育てをする女性が活動しやすい環境を女性が提案して改善していく必要がある。出産したばかりの女性で指導者の更新期限がきたケースがあった。誰かに赤ちゃんを預けることもできず、託児所がなく、赤ちゃんを連れてリアルの指導者講習に参加できないため失効という状況になりかけたが、指導者講習をオンラインにするよう提案したら認められた。その女性指導者は自宅でオンライン講習を受けて失効を免れた。

(育児は本当に大変)
お風呂、ご飯、寝かしつけなどをしていると、柔道の練習も指導もできず、休日のみ子供を母に預けるなどして指導している。小さいころから指導してきた子供達が大きくなって最近、全国大会に出たが、育児で十分に指導できず、伝えたいことが伝えられず心残りとなった。大会に行くにも誰かに託児をお願いしないと行くことができない。周りの理解があるのでかろうじて指導を続けているが、女性が出産で柔道から離れざるを得ない理由がよく分かった。

(2)女性指導者というキャリアへのサポート

(とりあえず女性を、の後のサポート)
「女性の登用促進」という社会の流れで、「とりあえず女性を」ということで、柔道部の監督になったり、コーチになったり、柔道協会の何らかの仕事を依頼されることが多い。ただ、その仕事を引き受けた後、「とりあえず女性を」だけで選んでいるので、その仕事をするうえで必要なサポートがないことがある。何かの仕事や役職を引き受けるように依頼したならば、しっかりサポートすることが大事ではないか。

(役職は避けたい)
「とりあえず女性を」ということで、柔道協会の中での仕事や役職が女性指導者に依頼されたりするが、多くの女性は役職に就くことを好まない。子育てしながら仕事をすることへの理解もサポートもないし、休むこともできないから。役職を引き受けなくても、女子同士が協力してその仕事をできることもあるので、女性同士が協力できるような環境整備をすることが大事

(3)コンパニオンではない

昔、イベントや懇親会で、「〇〇さんにお酌をお願い」と言われ、お酌をして回ったことがある。「ビールの持ち方が違う」とか説教をする方もいた。コンパニオンではない。一緒に参加していた女性は初めての参加だったが、二度と来なくなった。

(4)「競技実績がないから」と言われる

(競技実績がない1)
柔道協会内で女子柔道の普及に関する活動をしていると、「あの人は競技実績がないから(そのポストや活動にふさわしくない)」「(競技実績がある)〇〇さんにやらせたらいいのではないか」(〇〇さんはその活動をやりたいと思っていないのに)という意見がよく出てきて、活動に水が差される。

(競技実績がない2)
柔道協会内で女子柔道の普及に関する活動をしていて、何かの仕事や役職を女性指導者に打診すると、「競技実績がないので、自分は引き受けられない」と言われる。

(5)女子柔道の普及の活動を続けるコツ

(女性グループとつなぎ役)
女性指導者は少ないので連携していくこと、グループで動いていくことが大事。そのうえで、柔道協会の上層部と女性指導者の間をつないでくれる男性指導者をグループに入っていただいて、組織内で女性のグループが周りと連携して、意思疎通がしっかりできるような体制をとることが大事。

(貢献)
組織に何かを要求を認めてほしいならば、その組織に何か貢献する、という姿勢が大事。要求ばかりしていると受け入れられなくなってしまう。この点に関連して、大会の審判をする女性の指導者が少ない、という課題が出され、この点が課題であれば、託児できる環境をつくるなど、女性指導者が休日に審判できるような環境を作ることが大事、という意見も出された。

(いろんな意見を受け入れる)
女子柔道の普及の活動は新しい活動である。新しいことはどんな内容でも波風が立つし、叩かれたり、いろんなことを言われるのはある意味当然のことである。だから、いろんな意見が起きるのは当然のことだと理解して、新しい活動がすぐに理解されることを過度に期待せずに、いちいちそれに大きく反応せずに、メンタルにダメージを受けないようにすることが大事である。

(オープンにフラットに話し合う場が大事)
この3.0オンラインカフェのように、このようなテーマで男性も参加してオープンにフラットに話し合いができることが大事。女性の参加者の意見を聞いて、初めて女性はそのような課題を抱えていたのかと気づいたという意見もあった。このような場に参加することで知り合いもできる。特にオンライン(ビデオ会議)だと自宅から参加できるので女性は参加しやすい。

以上となります。引き続き、3.0オンラインカフェでは女子柔道をテーマとした話し合いの機会を設けていきますのでお気軽にご参加ください。

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