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同じような思いを子どもにしてほしくない。柔道での怪我を予防する方法について

怪我で柔道があまりできなくなり、同じ思いを子供たちにしてほしくないという想いから、トレーナーをされている進藤実由希先生に、柔道での怪我の予防について寄稿いただきました。

怪我の原因と現状

道場生は主に小中学生が多いと思いますが、成長期は怪我のリスクが高いです。

骨と筋肉の成長度合いに違いがあり、骨の方が早く伸び、その後に筋肉がそれに追いついていきます。そのために、骨の長さと筋肉の長さに差が出てしまい、筋肉は普段から引っ張られた状態になります。筋肉は引っ張られているので、硬くなり柔軟性が低下し、そうすることで可動域が狭くなり、怪我や故障のリスクが高くなります。それだけでなく、骨自体もまだ未成熟のため、関節付近の骨はまだ軟骨成分が多く、大きな負荷に耐えられません。

競技によって、痛めやすい部分は変わってきますが、どの競技をするのにも注意が必要です。野球では、肘の故障、肩の故障は多く見られます。膝や腰、足首を痛める場合や疲労骨折に至る場合もあります。この身長が大きく伸びる成長期は、親や指導者は特に注意が必要で、無理をさせないようにしなければなりません。

実際にJSPO日本スポーツ協会の統計データ(平成29年)によると、スポーツ中の外傷発生件数について、男子では、小学校高学年(10~12歳)が最も多く、年間36,958件発生していました。次いで、小学校低学年(7~9歳)が 14,531件、中学生(13~15歳)が12,435件でした。女子については、 男子と同様に小学校高学年(10~12歳)が最も多く14,553件、次いで、 40代( 40~49歳)が12,197件、30代( 30~39歳)が7,685件でした。

中学の部活動を例にスポーツごとに怪我の発生件数のデータを見てみると、部員あたりの発生率(発生/部員×100)は柔道が18.03%、バスケが14.65%、ハンドボールが12.15%、相撲が12.15%、サッカーが11.62%と柔道が多い結果となります。

 

以上から子どもの怪我が多いこと、柔道の怪我が多いことが分かります。ですが事前に防ぐことができる外傷や障害も多くあります。そこで怪我予防について自分自身の体験も踏まえ、自分なりに考えたことを述べたいと思います。

予防する方法

ストレッチ

一つ目はストレッチです。

ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、関節の動きを良くします。その結果、スポーツ中の怪我を未然に防ぐと言われます。しかしストレッチが大事と分かっていても、なぜ大事かまで子供が理解してなかったり、じーっと伸ばすだけのストレッチでは飽きたりすると、ただこなすだけなど練習メニューにおいてのストレッチの重要性が薄れてしまいます。

そうなってしまうと効果がありません。今一度現在のストレッチがどうなのか、子供たちのストレッチに対するモチベーションはどうなのか振り返ってみてください。

「ストレッチをちゃんと行わないと肉離れするかもしれないよ」、「ストレッチすると体が柔らかくなって怪我しにくくなるよ」などと子供たちになぜ大切なのかを理解してもらう声掛けも必要だと思います。

また、モチベーションを維持するために、ゲームとして楽しく取り組ませることが大事だと考えます。例えば、足を使ったじゃんけんや二人で足裏を合わせて手をつないで引っ張り合うシーソーゲーム、紐などで代用したリンボーダンス、ワニやイヌなどの動物歩きなどで全身の柔軟性を高めることが出来ます。練習前後にメニューの一つとしてストレッチの時間を設けることでみんなが取り組んでくれると思います。

体幹トレーニング

二つ目は体幹トレーニングです。

体幹トレーニングを行うことで姿勢保持や筋肉量が増えるため、姿勢不良による腰痛などの慢性障害を防いだり、バランスもよくなり、接触等における怪我が減ったりと外傷・障害予防に繋がります。また、ある論文ではクリケット選手を対象として、体幹トレーニングを行い、どのような効果があるか検証しました。エクササイズの内容は,まず基礎的な体幹メニューを覚えさせて、その後に動きをつけて応用のメニューを行いました。その結果、筋肉量が増加し、そのほかの体幹部分も改善を認め、腰痛は半分程度まで低下しました。さらに13週間の実験期間中に新規の腰痛発生者が出なかったことを報告しました。以上より、体幹トレーニングが腰痛軽減や悪化防止、再発予防に効果を示す可能性が示唆されています。これらから体幹トレーニングは重要だと考えます。

体幹トレーニングを行う上での注意点は正しいフォームで行うこと、呼吸をし続けることが重要です。また、じっとしている体幹だけでなく、動きの中に体幹トレーニングを取り入れたり、人やモノに引っ張られたり、負荷をかけられたりしながら体幹を意識するなど、スポーツを行う中で、正しいフォームや姿勢保持が必要な場面、動きの中での安定、外力等に負けない軸が必要な場面と様々な体幹機能が必要なため競技特性をふまえた体幹トレーニングが必要です。例えば、最初は簡単なプランクという肘をついて胴体を支えるメニューから始め、バランスボールに乗ったり、足をボールに乗せて手をついたり、少し足場の不安定なところに片足立ちしたりなど道具を用いたりすることで飽きずに取り組むことが出来ると思います。

そこでいくつか簡単なメニューを紹介したいと思います。

①プランク・・・頭から足まで一直線であることを意識する。呼吸を止めずにゆっくり呼吸する。

②ダイアゴナル・・・四つん這いの状態から片方の腕と、腕と反対側の足をゆっくりあげる。
指先から足先までが一直線になるようにキープする。(5秒~10秒)この動作を交互に行う。

③バランスボール・・乗ってじゃんけんやキャッチボールなど一度に複数の動作を行う。

④縄・バトルロープ・・・縄やバトルロープを地面にくねくねと複雑に置く。その上を歩く。(競争など)

⑤腕立てじゃんけん・・・向かい合わせで腕立て伏せの姿勢をとる。片方の手でお互いじゃんけんをする。時間の目安は30秒。

このように楽しみながら出来るものもあるので是非取り入れてみてください。

自分の身体への興味

三つ目は自分自身の体に興味を持ってもらうことです。

私自身もそうでしたが、小さいころはこのメニューをやったからどうなるとか、今の自分の体がどうなっているかということに興味がなく、言われたことを何も考えずにやっていました。ですが、自分が興味や関心があるもの、好きなものを人は自分で大切に管理するし、もっとこうしたい、こうなりたいと考えることがあると思います。だから自分の身体に興味を持つことで、自分で自分の身体を大切にできるし、管理できると思います。そうすることで、ストレッチやトレーニングも意欲的に行い、怪我予防につながると思います。

興味をもってもらうために、例えば「太ももの前伸ばさないと膝も怪我しちゃうよ」、「太ももの後ろが硬いままだと肉離れするかもしれないからしっかり伸ばそう」というように伝えることが出来たらいいのではないかと思います。

休養

また、怪我は外傷だけでなく、疲労骨折などの慢性的な障害もあります。その時にちょっとした異変を子供が気づいたときに相談できる関係や、休養が必要な時にしっかり休める雰囲気も大切だと思います。休むことがときには悪いことではないということも子供たちに理解してもらうことで焦らずにしっかりと自分の体のことを考えることが出来ると思います。そのような雰囲気を作るためには指導者による負荷調整、スケジュール管理が必要です。

怪我で柔道ができなかった経験から

私自身が未熟なためこうすべきだと自信をもって言えることではありませんが、中学校の時の怪我に、今も付き合っています。

「あの時にこんなことを知っていたら、こうだったら」

ということを含め書かせていただきました。

私は腰椎分離症で手術を数回行い、高校も片手に収まる回数しか試合していません。リハビリ期間が長く、高校3年間で道衣を着た期間も一年もありません。

我慢の毎日でした。我慢できずに無理をして悪化した時もありました。諦めようとしたことも何度もありました。

でも、監督やトレーナーの方々がいたから乗り越えられ、今ではこの怪我で自分の目標ができ、怪我をしたことも悪くないとプラスに思えています。

しかし、同じような思いを他の人にしてほしくありません。子どもたちには好きなだけ競技を楽しんでほしいと思います。そのために、これからも自分自身ももっと知識を増やし、ジュニアスポーツに関わっていきたいと思います。

「勝ち負けだけではない」

この言葉を私の恩師である道場の先生がよくおっしゃっていました。勝ち負けだけではなく子供たちがこの先も柔道を楽しむために何が大切か先生方と一緒に考えていきたいと思います。

進藤実由希

トレーナー。順天堂大学柔道部で4年間トレーナーとして帯同、サッカー部、陸上選手もサポート。興味関心は体幹トレーニング。

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