【授業レポート】「弱いやつが柔道を語るな」と迫害されてきた「柔道博士」こそが救世主である!?
2021年6月25日(金)、72回目となる3.0オンラインカフェは「柔道の試合を観戦して楽しむ人が増えるにはどうしたらいいか?」というテーマでのディスカッションでした。
様々な観点から話し合われて盛り上がったのですが、その中でも、①柔道博士の地位が低い、②日仏の観客の観戦態度の違い、という二つのとても印象深い意見があったので紹介させていただきます。
①柔道博士の地位が低い
観戦する人が多いスポーツ、ファンが多いスポーツは、テクニカルな話、マニアックな話を楽しむ人がたくさんいる。
中でもたくさんの知識を持っている人、鋭い分析をする人が一目置かれ、尊敬されるカルチャーを持っている。「野球博士」や「サッカー博士」と言われる人々だが、どのクラブにも1名ないし2名程度、マニアックな部員がいて、彼ら彼女らは、必ずしも、野球やサッカーが上手いわけではないが、それでも、その持っている知見ゆえに一目置かれ、重宝されている。
他方、柔道の場合、どうだろうか?
「弱いやつが語るな」
「勝ってからモノを言え」
と一蹴されてしまうケースが少なくない。他の人気のあるスポーツと比較して、「柔道博士」は一目置かれておらず「柔道博士」であることがバレてしまうとバカにされたりするので柔道博士は隠れて生きていかざるを得ない。その結果、「柔道博士」がいなくなるため、柔道のマニアックな話、テクニカルな話が盛り上がらず、柔道を見て楽しんで観る人がぜんぜん増えない。
「柔道博士」の地位が向上したら柔道の試合を観戦して楽しむ人が増えるのではにないか。迫害されきた「柔道博士」こそが真の柔道の伝道師であり、柔道普及のカギを握るキーパーソンなのだ。
話し合い
このようなご意見でした。この話を受けて
- 自分も柔道のマニアックな話が好きだが、学生の頃は柔道博士であることを柔道部の仲間に言えなかった。そういう話をする相手が部内にいなかったし、相手にされなかった。たまたま大人になって指導者になってから、柔道のマニアックな話ができる人と出会い、柔道のマニアックな話で盛り上がるようになった。
- テレビに出る映画評論家、音楽評論家、サッカー評論家、野球評論家など、評論家としてコメントをした人は必ずしも選手として活躍した人ばかりではない。
- ある特定のことに詳しい子供が授業する「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」というテレビ番組があるが、「柔道博士ちゃん」がたくさんいてほしいし、柔道博士ちゃんが評価されるようになることが必要なのではないか。
などの意見が出されました。
さらに、この話し合いの中でもう一つ印象深かったのは、日仏の観客の違いです。
②日仏の観客の観戦態度の違い
日本の柔道大会の場合、観客の多くは応援する選手がいて、自分が応援している選手が試合に出場したとき、応援する。しかし、自分が応援している選手が負けてしまったり、試合に出てないとき、帰ってしまったり、試合を観てないことが多いように感じる。だから、決勝戦であるにもかかわらず、予選のときに人がいた場所の空席が目立つということがよくある。
他方、フランスで開催されたグランドスラムパリを観たとき、観客は、自分が応援する選手がいたとしても、それ以外の選手の試合を観ていて、見事な技が決まったとき歓声が上がるし、最後まで試合を観るから、空席を目立つということがない。
大会は予選から決勝まで長い。自分の応援する選手を観て楽しむ、という観戦スタイルの場合、その選手が出る試合は全体のわずかなので、観戦をわずかしか楽しめない。
推しの選手以外の柔道の試合を観ても楽しむことができる、というのは大事なのではないか。例えば、日本の総合格闘技などの大会の場合でも、観客は推しの選手がいたとしても前座の試合を楽しんでいる。
話し合い
このような話でした。これを受けて、
- そういえば、グランドスラムパリに行ったとき、観客がきれいな服装をしていた。試合を観るためには身だしなみを整えていく必要があるということに感動した。
- 日本武道館の場合、1階の空席が目立つことがある。1階に空席が目立つと、2階、3階にたくさん人がいてもイマイチ盛り上がれない。おそらく1階の席は招待客として選手の関係者が多く、応援している選手が負けると帰ってしまうのではないか。
- 昔は世界で勝つことができるスポーツは柔道しかなかった。だからたくさんの人々が柔道の試合を観た。しかし、いまは様々なスポーツが世界で勝てるようになってきた。柔道の試合を観る人が減っているのはこのような変化があると思う。
- 観客の立場からすると、夜に試合をやってほしい。普通の人が休日の午前に行くのは難しい。グランドスラムパリは夜に開催していた。夕方から夜だったら友人を誘って見にいこう、となる。
などの意見が出ました。
“推し”を教えてくださいプロジェクト
以上、今回の3.0オンラインカフェは「柔道の試合を観戦して楽しむ人が増えるにはどうしたらいいか?」というテーマでのディスカッションでしたが、様々な視点から話し合うことができ、有意義な会となりました。その後、これらの話し合いを受けて、間近に迫った東京オリンピックを観て楽しむためのプロジェクトが立ち上がりました。東京オリンピックに出場する選手について、それぞれの「推し」の選手を教えていただき、それをjudo3.0のSNSでシェアするという取り組みです。ぜひみなさまの推しをこちらのアンケートフォームから教えてください。とくにあまり表に出ない「柔道博士」のみなさま、ぜひお力沿いをいただけたら本当にありがたいです。