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未来の発明

発達障害と柔道指導のノウハウをすべての指導者に-ワークショップの開催-

NPO法人judo3.0は、2018年5月から、全国各地で、発達障害の可能性のある青少年に対する柔道の指導法についてのワークショップを開催しています。


辞めてしまったあの子を思い出すことはありませんか。
もっと違う指導をしていたらあの子は柔道を続けることができたんじゃないかと。

子どもたちの個性はとても多様。 そんな個性豊かな子どもたち一人ひとりが素敵に成長するためにはどうしたらいいのか。

実はノウハウがあったんです。
発達障害の専門家・実践家であり、柔道の先生であるという世にも稀な講師によるワークショップです。
これからの子どもたち一人ひとりが柔道クラブで輝くための一歩を踏み出してみませんか。


目的

文部科学省の調査によると、全国の小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、6.5 パーセントが発達障害の可能性のあるといわれており、近年注目を集めているのは、多くの発達障害の可能性のある子どもたち(発達に凸凹のある子どもたち)が「身体の不器用さ」を抱えていることです(「発達性協調運動障害」)。人は身体を動かして外の世界との関係を作り社会性を育むことから、身体の不器用さは単なる運動面にとどまらず、人間関係や学業など広い範囲で悪影響を与えることが問題視されています。 もっとも、身体の不器用さは適切な運動環境があれば改善します。また、最近の脳の研究などは、運動によって、記憶力、集中力、創造性、意欲、自尊心が高まるなど、様々な側面から脳機能を高めることを示しており、発達に凸凹のある子どもたちの健全育成を図るうえで、運動することのできる環境づくりは急務であると思われます。 発達凸凹の子どもたちが柔道クラブでイキイキと柔道ができるようになったら、子どもたちは発達します。もっとも、発達に凸凹のある子どもたちの柔道環境について、この点の実態を客観的に調査した取り組みは、本団体の知る限り見当たらず、本団体が見聞きした範囲によると、以下のような事情が見受けられました。

  • 指導者はどのように指導したらいいか分からず、相談できる相手がいないうえ、ノウハウを学ぶ機会が用意されていない。
  • クラブに入会しても、練習についていくことができなかったり、周囲の人々の理解が不足するなどの事情(他の保護者から「あの子のせいで練習が中断する」などの苦情)で辞めてしまう。
  • 子どもが入会を希望しても、保護者が周りに迷惑をかけることを懸念して参加させない。

そこで、発達に凸凹がある子どもたちがイキイキと柔道できる環境づくりを目的として、このワークショップを企画しました。この取り組みは発達凸凹の子どもたちの健全育成を図る取り組みであると同時に、柔道の普及活動でもあります。

映像

2019年6月16日(日)、新潟県新潟市にて、新潟県柔道少年団さまから後援いただき、主に新潟の柔道の指導者の皆様を対象にして開催したワークショップの映像です。

主な講師

発達障害を専門的に学ぶ方は増えていると思いますが、発達障害の専門家であり、かつ、柔道の指導者というキャリアをもった人は稀だと思います。本ワークショップは、柔道指導者であり、かつ、発達障害についてのそれぞれ異なる領域(研究・少年柔道クラブ・福祉施設)で研究や実践している者が講師となっている点に大きな特長があります。

長野敏秀氏

発達障害がある子も、ない子も、共に柔道ができるユニバーサルな環境を目指して、2015年、柔道クラブ「ユニバーサル柔道アカデミー」(愛媛県四国中央市)を設立。少年柔道クラブにおける発達凸凹のある子どもたちへの柔道指導について実践を積み重ねている。

西村健一氏

島根県立大学にて発達障害を研究する研究者(准教授)。著書に「子どもが変わる! ホワイトボード活用術 (見る・聞く・書く・話す・参加するために)」読書工房(2017/11/30)(共著)などがある。少年柔道クラブの指導に長く関わっている。

浦井重信氏

福祉施設である放課後等デイサービス「みらいキッズ塾」(大阪府堺市)を運営し、発達障害のある子どもに対して柔道を中心とした運動プログラムと学習支援を行っている。少年柔道クラブ(ブレイザーズ柔道クラブ(大阪府堺市))の指導者でもある。

上記以外にも講師をしてくださる方々がいらっしゃいます。ワークショップごとに調整しております。

教材

本テーマに関する教材を開発して、書籍「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」を出版しています。 書籍の購入はjudo3.0オンラインショップまたはアマゾンから。

開催実績

  • 2018年5月6日(日)兵庫県神戸市
  • 2019年6月16日(日)新潟県新潟市 後援:新潟県柔道少年団
  • 2019年7月19日(土)石川県金沢市 共催:石川県柔道連盟
  • 2019年11月16日(土)広島県東広島市 共催:広島大学スポーツ科学センター
  • 2019年11月17日(日)兵庫県丹波篠山市 協力:cafe & judo studio TOUYA
  • 2019年11月24日(日)東京都小金井市 協力:東京学芸大学
  • 2019年12月14日(土)愛媛県四国中央市 協力:ユニバーサル柔道アカデミー
  • 2020年1月26日(日)鹿児島県鹿屋市 協力:放課後等デイサービスnico
  • 2020年2月16日(日)北海道上川郡当麻町 共催:NPO法人とうまスポーツクラブ
  • 2020年2月23日(日)三重県津市 協力:河芸柔道クラブ

300名以上の皆様に参加いただき、91%の皆様から「参加してよかった」という感想をいただいています。

  • 今までやりたくてもやめてしまった生徒もいました。広く柔道したい人が頑張れる、楽しめる道場が必要と感じました。この手法は発達障害でなくても有効な指導と感じました(40代、指導者)
  • 保護者としてこのような知識をもった指導者が増えることはとてもうれしいことです。注意ばかりされる子が褒められ、自信をつけられる場があることはとても望ましいです(50代、保護者)
  • 子どもとの付き合い方、教え方など、すべてを見直す時間でした。どんな子でも時間をかけて教えれば必ずできるようになるということを改めて感じました。初めて参加させていただきましたが、全国にはこのことを知らない人がとてもたくさんいると思います。どんな形でもひろめていくべきお話だと思います(20代、指導者)

開催に至る経緯

NPO法人judo3.0は、2016年から柔道教育に関するフォーラムを開催し、そのテーマの一つとして発達障害と柔道指導を掲げ、関係者が話し合う場をつくってきました。その結果、各地の有志がつながり、2017年10月、発達凸凹の子どもたちへの柔道指導について、ノウハウの開発を行うプロジェクトがスタートしました。2018年5月、神戸にて、発達障害と柔道指導に特化した初のワークショップを開催しました。

2018年5月のワークショップの様子(140秒)

このワークショップは、ノウハウを学ぶ場であるとともに、自分たちが抱える課題や悩みを話し、同じ課題を有する他の地域の人々とつながることができる場として参加者から高い評価をいただきました。また、遠方から参加した指導者からは「自分の地域での開催してほしい」という要望もいただきました。このことから、このワークショップの必要性は高いと考え、2019年度は全国で開催することにいたしました。

コーディネーター

酒井重義

NPO法人judo3.0代表。一般社団法人日本運動療育協会理事。東北大学法学部・同大学院法学研究科修士課程を修了。都内の法律事務所で弁護士として勤務した後、自身の体験及び脳神経学者ジョン・レイティ博士の「脳を鍛えるには運動しかない」(NHK出版)から運動が有する様々な効果や可能性を知り、発達凸凹の子どもたちなど、運動を必要とする人々に届いていない現状の改善に取り組む。発達障害児への学習支援などに取り組む株式会社LITALICO、発達障害児への運動療育に取り組む一般社団法人日本運動療育協会での勤務を経て、NPO法人judo3.0を設立。グローバルでインクルーシブな柔道環境づくりに取り組み、本ワークショップの事務局を務める。

資料